グーグル・アマゾン化する社会

帰国の朝は昨日からの雨が続いていた。
8時の飛行機だったので、5時に携帯のアラームをかけておいたが、2時半くらいには目が覚めてしまったので、少し仕事をしながら朝になるのを待って、5時前にチェックアウトした。
2泊分は無事に戻ってくることを確認し(皆様ご心配下さって有り難うございます)、タクシーを呼んで空港へ。
友人のKさんは「現地公共機関を使う派」だというが、こういう時間帯のときはどうするのだろう???
ニューヨークは24時間地下鉄が動いているが、人口40万人のアトランタではちょっと期待できなさそう(未確認)。
さすがに朝早いので道も空いていて、快適に到着し、さてチェックイン、と思うと航空券が見あたらない!!!
出発までの時間がありすぎて仕事を始めるというのも注意力を散漫にするらしい。
やれやれ・・・と思って(やや神妙な面持ちで)カウンターに。
「あのー、すみません、チケットを無くしてしまったようなんですが、日本で旅行社を通じて予約は入れてあります。」
「ノープロブレム! 最終到着地はどちらですか?」
「成田、トーキョーです」
「パスポートをどうぞ」
どうも、今時はすべて電子処理されているので、まったく問題ないらしい。
それにしてもどこで無くしたのだろう???

旅のお供に新書を2冊連れてきたが、行きの飛行機で1冊半くらい読んでしまって帰りに読む物がなくなってしまったのが悲しい。
そのうちの1冊は『グーグル・アマゾン化する社会』(森健著、光文社新書、2006年9月刊行)というものだが、なかなか面白かった。
膨大かつ多様な情報があるにも関わらず、アクセス数の多いサイトや売れ筋の本は一極集中する傾向があるということを分析している。

書店に行く時間がないと、ついアマゾンに頼ってしまうが(そして、書店で買うよりも明らかに多数の本を一度に購入してしまうが)、日本版が始まったのはまだ5年前くらいだ。
1冊見つけてクリックすると、「この本を買った人は次のような本も買っています」というrecommendationが出てくる。
私はこの商品戦略にはあまりひっかからないのだが、同じ著者の書籍リストなどを見てしまうと、ついでにあれも、これも、となってしまう。
本屋さんで捜すと、物理的な重さで3冊買えば満足するが、インターネットショッピングは脳が飽きるまで続く。
それぞれの本にはレビュー(書評)を書き込むことができ、誰でも星いくつ、という評価とともにコメントをアップロードする「参加型」の仕組みがアマゾンを大きくしたと筆者は捉えている。
確かに、専門家に原稿料を払って書評を書いてもらわなくても、素人が勝手にやってくれるというのは、非常に自律的かつ低コストのシステムである。

日本ではヤフーの検索も多いようだが、世界全体では圧倒的にグーグルの一人勝ちである。
イメージ検索もプレゼン準備には便利だし(クレジットは明記するとして)、最近では世界のどの地域でも衛星からの画像を拡大して見せるGoogle Earthも面白いと思った。
グーグルで適切なキーワードを打ち込めば、即座に何万件、何百万件ものウェブサイトがヒットして挙がってくる。
だが、そのトップから最後まで読む人はごくまれで、普通は1頁目くらいをチェックして終わりになる。
当然である。1つ5分で読んだとしても、百万件読むには数日かかるだろう。
という訳で、ウェブの世界ではグーグルで上位に挙がることが最重要課題になり、つまり1私企業のやり方に皆が従わなければならないことを意味する。
あるいは、グーグルでヒットしなければ、この世に存在しないのも同じということになる。
極めて便利なツールであり、もはや無しでは生きられないのだが、本当にこの方向に向かっていってよいのだろうか?

* ****
空港のゲートで待っている間にCNNのニュースで、北朝鮮がまた核実験に対するライス国務長官のコメントを流していた。
この国の狂った代表の言動も誰も止められない。

マドンナが養子をもらったというニュースも。
少子化が問題でも、一般的な日本人は外国から養子の子供を連れてくるというメンタリティイーはない。

* *****
シカゴの乗り換えはターミナル3からターミナル5まで空港内トラムに乗らなければ成らず、しかもかなり歩く。
20分くらいはかかってようやく移動し、カウンターに行く。
「ハーイ、アトランタでチェックインしてますが、搭乗券をお願いします」
「オーケー。パスポートをどうぞ。・・・あ、ちょっとメッセージがあるみたいなので、少々お待ち下さい」
カウンターのお姉さんは一旦奥に引っ込んで、しばらくすると何やら手にして戻ってきた。
「貴女のチケットがありました」
「本当ですか? 無くしたと思っていたんですけど、行きにどこかで落としたんですね。ありがとう。」

む、む、む・・・きっと、行きの乗り継ぎのセキュリティーのところで手荷物等をスキャンした後、「水物」没収に関してやりあったときにチケットを取るのを忘れたか、向こうがハンドバッグだけトレイから取り出して、チケットがトレイに残されたか、そんなところだろう。

だいたい、毎度毎度の手荷物検査では、ノートパソコンは出せ、ジャケットは脱げ、靴もトレイに入れろ(日本人的にはかなり居心地が悪い)、その他金属探知器に引っかかりそうな装身具ははずせ(私の場合は髪を留めるバレッタが引っかかる)、と五月蠅いこと。
で、終わるとまず靴を履いて、PCをトートバッグに戻し、ジャケットを着て、バレッタで髪を留め、パスポートと搭乗券を仕舞って、さあ、ゲートに向かう、というステップを踏むのだが、行きのシカゴ空港では、この間に「目薬だけはご勘弁を・・・」みたいな交渉をしていたので、パスポートと搭乗券は確認したが、チケットはミスってしまったらしい。

研究者ブロガーのP先生は、いつぞや「あわやパスポート紛失?」というネタで数エントリー分、読者を楽しませて下さったが、チケット紛失は「紛失しても大丈夫」という訳で、大したことではありませんでした。

*****
という訳で無事に帰国。
成田からのエントリーでした。
このまま千歳に飛びます。
by osumi1128 | 2006-10-18 17:23 | 書評

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