911 surviver: 盲導犬とともに

昨日の出来事。
土曜日まで札幌に残ったのは、帯広畜産大学主催「国際市民フォーラム:進化する盲導犬の育成システム」というシンポジウムを聴くため。
個人的な興味というよりも、振興調整費プログラムオフィサーとしての用務である。
というのは、このイベントは振興調整費重要課題解決型プログラム「優良盲導犬の育成に関する生殖工学的研究」の一貫として開かれているからだ。

代理母の話題で新聞に特集が組まれるくらいだが、生物学者という立場からは、家畜であっても自然ではない生殖プロセスにやや居心地の悪さを覚える。
最先端の不妊治療やら極小未熟児の治療と、優良な家畜のクローン化や生殖工学は、それぞれ極端な端を向いているが、どちらも自然の摂理よりも人間の都合を優先しているという意味においては同じだからだ。

ただし、この盲導犬プロジェクトが「重要課題解決型」プログラムとして採択された社会背景としては、必要とされている盲導犬の数に生産(!)が追いつかないということがある。
せっかく子犬から訓練しても、大きな音にびっくりして怯えてしまうような性質のイヌだと、盲導犬、介助犬としては働けない。
また、このような任務のイヌたちは、雄も雌も去勢・避妊させられるので、せっかく優秀だとしてもその子孫を残すことができない。
そこで、卵巣移植や精子凍結保存などの技術開発が求められているという訳である。

シンポジウムは、全国盲導犬施設連合会副会長の方(視覚障害者)に始まり、次に中途失明によりサラリーマンから鍼灸師に、さらに長岡市議会議員になった方が盲導犬オパール号を連れて登場。
失明したら人間失格になるような気持ちだったが、盲導犬との出会いにより再びチャレンジする意欲を取り戻すことができたと話された。
さらに、日本獣医師会会長の方から、日本でももっと盲導犬、聴導犬、介助犬の必要性や、もっと社会の中で受け入れられるべき(例えば、病室で患者さんを癒すのに使われてもよいはずなど)と主張され、そのような社会における獣医師の果たす役割を強調しておられた。

休憩の後、Guide Dogs UKという組織の繁殖センターの方が、どのようにして介助犬をトレーニングするかについて講演された。
その次に話をした方は、Guid Dogs for the Blind, USAという組織でNational Public Affairs and Donor Relations Officerという立場のマイケルさん。
彼はなんと911のテロ襲撃の最中、盲導犬ロゼールとともに世界貿易センタービルの78階から逃げることができたという経験の持ち主だった。

その朝、マイケルさんはロゼールを連れて出勤し、同僚のディビッドとともに9時からとある会社でのプレゼンに備えていたらしい(目が見えなくてもグラフを使うこともあります、とさりげなく言っておられた)。
突然、大きな爆音と揺れを感じ、緊急事態だといってオフィスはざわめきたったが、「ロゼールがおとなしいから大丈夫さ」
そこから、オフィスワーカーが皆、あわてふためいて階下を目指す群れの中、消防士が上ってくると端によけつつ、延々と盲導犬ともに階段を降りた。
「ディビッドは、48階、47階・・・とフロアの段数を数えることに集中して気持ちを落ち着けようとしていたけど、僕はひたすらロゼールに注意を向けていた。僕たちはパートナーだから、お互いに信頼し合わなければ駄目なんだ」
ロゼールに「Good girl. Left. Forward…」と声をかけつつ下った。
最初は何が起きたのかまったく分からなかったが、飛行機の燃料の匂いがするのに気が付いたという。
ようやく下まで降りた頃、再度爆音がし、ディビッドが「第二タワーにもまた飛行機が突っ込んだ!」と叫んだが、もちろんマイケルさんには見えない。
とにかく安全なところまで急いで行かないと、と、普段は盲導犬には走らせないのだが、ロゼールと共に走った。
大きな段差があったり行き止まりだったりすると、ロゼールが立ち止まって教えてくれる。
そうやって、生き延びることができ、ようやくつながった携帯で奥さんに無事を告げた。
「カレン、ロゼールのお陰で脱出できたよ」

この大きな体験の後、マイケルさんは世界中をロゼールとともに巡って、盲導犬の重要さと世界の平和を訴える活動を行うことにしたという。

マイケルさんの話はこちらで聴けます。

不気味な隣国との関係が俄に緊張感を増してきている中、私は被爆国である日本こそがきちんと核兵器行使により何がもたらされるかについて世界に強く発信すべきだと考える立場である。

* ****
マイケルさんの講演は、まさに「911 surviver」の語りであり、臨場感たっぷりの見事なもので、思わず最後まで聴いてしまったのだが、大慌てでキャリーケースをごろごろ転がしつつ札幌駅に着くと、千歳エアポートの次の列車は15:55という。
ま、まずい、私の飛行機は17:00丁度発のはず。
千歳空港駅到着が16:31で大丈夫か???
乗り遅れたら、友達との約束が・・・・・

焦る気持ちを抑えつつ、まず、札幌駅の中に自動チェックイン機があったので、チェックインしてしまう。
千歳エアポート号に乗車したところで、JALのサービスセンターに電話をし、(ああ、携帯って本当に便利)、「すみません、すでにチェックインはしてあり、空港駅到着が16:31なんですけど、17:00発には間に合うでしょうか?」
「少々お待ち下さい」
(こういうときの「少々」は異常に長く感じるものだ)
「お客様、17:10までにゲートのカウンターにお着きになれば大丈夫です。セキュリティーなどが混んでいますときは、事情をお話しになって、優先してもらって下さい」
ラッキー! それならきっと大丈夫。

で、エアポート号は予定時刻に到着し(さすがニッポンのJR)、そこから走らずに空港に行き、まずカウンター近くのお姉さんを捕まえて「すみません、17:00発なんですけど、荷物はまだ預けられますか?」
「15分前まで大丈夫です」
この時点で時刻は16:35くらいだったので(千歳空港駅と空港はかなり近い)、余裕で(どこが?)キャリーケースは預けてしまい、それから余裕で(ホンマか?)空いているセキュリティーを通り(日本では靴を脱がなくてよい)、かなり端の17番ゲートまで向かう(札幌—仙台便はマイナーなのだ。当たり前だけど)。
ゲートに着いたのは16:45くらいで、余裕でトイレにも行けたくらい。

という訳で、無事に予定通りの飛行機に乗り、他に時間を守れない客もおらず17:00過ぎには滑走路に向かって動き出した。
やれやれ・・・

一旦荷物を自宅に置いて、中学の同級生「つーつ」と呼んでいた友達をピックアップしに、約束通り19:00過ぎに駅前のホテルに向かう(この辺が仙台アーバンライフってことです)。
ロビーに降りてきた彼女とは20年以上会っていないのだが、昔の面影はしっかり残っていて、非常に懐かしかった。
今回、彼女は技術経営学会とかいう学会に参加のために来ていたのだが、懇親会はパスしてくれて都合が付いた。
実はちょうど同じ時刻に、神奈川県は藤沢では、中学の同窓会が開かれていたはず。
こちらは二人でワインバーTでのプチ同窓会@仙台となり、誰々はどうしてる、あのときはこうだったよね、というような話題で盛り上がった。
by osumi1128 | 2006-10-22 22:02 | 雑感

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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