日本国際生物学賞、産学官連携サミット、異分野交流、そして……

月曜日は朝から日帰りで東京出張だった。
まず最初は上野の学士院で開催された日本国際生物学賞の授賞式。
今年のテーマは「時間生物学」で、オランダのサアジ・ダアン博士が選ばれた。
昨年はこんなに関連分野の方々がお祝いに駆けつけるということはなかったように思うが、今年はさすがに日本で人口の多い分野でもあり、いろいろな世代の関係者が来ておられた。
この賞は昭和天皇の在位60周年を記念して作られ、学術振興会が出しているものだ。
今回の受賞者のお陰できっと認知度が上がったのではないかと思う。
天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、天皇陛下はヨーロッパご訪問の際に見た鳥の渡りのエピソードを交えたスピーチをされた。
ご退席になる際に、美智子様が段差を降りられるのをさりげなく気遣うご様子がとてもほほえましく思った。

次の予定は赤坂プリンスで開かれた「第6回産学官連携サミット」という会議だった。
高市大臣の基調講演には間に合わなかったが、その後の、元スタンフォード大のウィリアム・ミラー博士の特別講演から聴くことができた。
いろいろな具体的な数字が挙がっていたが、1950年と2004年の比較で、ノーベル賞受賞者がゼロから25人に、年間予算が1億ドルから23億ドルに、年間の授業料が600ドルから28500ドルに変わった訳だが、私が取り上げたいポイントはfaculty memberが370人から1760人に増えたということだ。
1950年にはUndergraduatesが4800名で、Graduate studentsが2800名の合計7600名に対しfacultyが370名なので、単純計算によれば教師一人当たりの学生数は13名程度だったものが、2004年には学生が2800名+7800名=10600名へと増えたのに対し、教員は1760名になったので、教師一人当たりの学生数はむしろ減って6名になったのである。

ちなみに、現在の我が東北大学は学生数が学部と大学院と合わせて16000名、で教員が2500名なので、割合は教員一人当たり6.4名の学生ということなのでさほど変わらないような印象だが、たぶんこちらの教員の定員は50年間で3倍以上に増えた訳ではないだろう。
つまり、スタンフォードでは学生、とくに大学院の学生の数を増やす際に、それに見合っただけ教員も増加されたのであろうことが伺える。
方や多くの日本で「大学院重点化」が行われた際には、教員の定員はほぼそのままに、大学院生の数だけが大幅に増えたのだと思う。
また、スタンフォードのfacultyの場合と違って、日本の教員には助手まで含まれているので、だいぶ意味合いが異なる。

特別講演のもう一人は経団連副会長の庄山悦彦氏。
イノベーションのために必要なこととして、人材育成を挙げられ、インターンシップの拡大や、博士の採用を増やすための産学意見交換会を経団連で開始したことなども述べられた。

休憩を挟んで、パネル討論は、東大総長の小宮山先生、静岡県知事、総合科学技術会議の阿部先生、ベンチャーキャピタルの西岡郁夫氏、経団連の笠見昭信氏、そしてスタンフォードのミラー氏がパネリスト。
西岡氏の「なぜ日本にベンチャーが育たないのか」についての考察が面白かった。
氏によれば、大企業がハイテク研究開発を独占し、大企業の社員にはベンチャースピリットがなく、大企業はベンチャーとうまく協業できず、グローバルな競争社会の中で日本の学生は惰眠惰食を貪っている、ということが原因となる。

3つ目の予定は、「異分野交流夕食会」なるもので、とあるベンチャーのH氏のアレンジ。
もともとは、チャイルド・ハートという保育施設の会社を立ち上げられた女社長のKさんにお話を伺ってみたいと話したことから、それなら他のひとにも声を掛けましょう、ということで、JSTの方やら科学技術政策研究所の方、名古屋大や東大の大学院生にもお声がかかり、20年くらいの年齢層の女性が8名ほど集まった。
同じテーブルの横では、ベンチャー関係の別の打合せも同時進行だったのだけど。
こういう女性起業家のお話をうちのエンジェルさん達の前でして頂くのもいいのではと思った次第。

*****
昨日(火曜日)、夕方片平で打合せの会の後、自宅に近いエリアでお寿司を頂く会があると思いこみ、打合せが終わってから一端自宅に車を置き、ちょっとだけ、メールチェックしようと確認したら、お寿司の会は水曜日であることに気が付く。
うーーーん、確か先週も似たようなことをしていたのではないか・・・?
一週間の感覚が短めにシフトしているのだろうか???
とにかく、夜7時から自宅にいるというのは、エラく夜が長くて、それはそれで、ニュースやらクローズアップ現代を見たり、いろいろ書き物がはかどったりもしたのだが・・・
Commented by K_Tachibana at 2006-11-23 14:25 x
産学官連携シンポジウムは,情報収集のため私も参加しました.「イノベーション25」について表面上の話しか伝わってこなかったので.
今回は,西岡先生の話もよかったですが,パネルディスカッションのモデレータとして登壇された黒川先生が直々に「イノベーション25」の背景について話されたこと.この話こそ,科学コミュニケーターが伝えていかないと「イノベーション25」や第3期計画の「イノベーション」戦略が,一部でかなり曲解されて認識されていると思っています.
私の知っている方ですと,お茶大の「食のコミュニケーション円卓会議」でアドバイザーをしていただいている唐木先生もお見えになっていたようです.
Commented by osumi1128 at 2006-11-23 23:42
K_Tachibanaさん、こんばんは。
官からはかなり気合いの入ったメンバーが参加されていましたね。社会のシステムや仕組みをどのように変えていくのか、楽しみにしています。
Commented by ポリ at 2006-11-25 05:16 x
スタンフォードで脳研究している者です。ちょっと undergraduate の数字に違和感があったので、調べてみました。大学の公式サイトによると、2005年のデータで、

Undergraduate students...6705 人
Graduate students    ...8176 人
Faculty ...1771 人

ですので、faculty 一人当たりの学生数は約 8.4 人となります。東北大学の方が、かなり少ないのですね。

1950年のデータが正しいとすると、undergraduate 1.4 倍に対して、graduate 2.9 倍、faculty 4.8 倍ですから、おっしゃるとおり大学院生増加分を補って余りあるほど教員数を増やしている訳ですね。

教員一人当たりの学生数はそう変わらなくても、日本と違って一つの研究室には faculty は一人しかいないので、日本のように大学院生が10人もいる研究室というのは見たことがありません(ビッグラボはポスドクの数が多い)。小さな城が沢山ある、といった感じです。
Commented by osumi1128 at 2006-11-27 00:19
ポリさん、コメントを有り難うございました。
1年で状況が変わったということなのかは分かりませんが、上記の2004年の数字というのは配付資料に載っていたものなので、それなりの根拠があるのだとは思います。いずれにせよ、東北大学の数字にはいわゆる「助手」までfacultyに入っていますので、米国の状況とはやや異なると思っています。つまり、「学位を与えることができるfaculty」を分母にしないと、きちんとした比較にはならないのではと考えられます。いずれにせよ、Stanfordで大学院生の増加とともに教員数はかなり増やされたという事実は間違いないと思います。
by osumi1128 | 2006-11-23 00:59 | 科学技術政策 | Comments(4)

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