クローズアップ現代「揺らぐ科学の信頼~東大・論文ねつ造疑惑~」
2007年 01月 11日
フィンランドはサンタのふるさととしても有名な北欧の小さな国ですが、NOKIAの携帯やMarimekkoという布やテキスタイルのデザインメーカーで有名です。
また福祉の面でも進んでいて、バリアフリーなトイレの空間デザインなどにおいても優れています。
あ、大統領も女性ですね。
さて、家に戻ってから、無事に録画できていたNHKクローズアップ現代を見ました。
東大のT教授の件を取り上げていて、実際にT教授とK助手、さらに、匿名の元研究員という方のインタビューも放映されました。
国谷さんのお相手はJSTの北澤理事でした。
このトラックバック先の5号館のつぶやきさんのエントリーでは、「この番組のどこを見ても、今後論文ねつ造などの不正行為がなくなるであろうとは思えなかった」と書かれていますが、私はそこまでネガティブな印象ではありませんでした。
そもそも、この番組が放送されたこと自体が画期的だと思います。
2005年に東大で調査委員会が立ち上がってから1年以上に渡って取材を続けていて、年末に「懲戒免職」の処分が決まったことを受けて、番組化されたことを考えますと、「マスコミはネタとして論文ねつ造疑惑もおもしろいから書き立てることをしますが、騒ぎがおもしろくて書いているだけで、科学の世界を良くしようとか、大学を良くしようなどという高い志がちっとも伝わってきません。」という風には見えないのです。
つぶやきさんの批判は
JSTの北澤さんが出ていらして、ねつ造の原因として現在の研究費配分システムに問題があるとあまりにもあっさりと認めていらっしゃったことも、この先大規模な改革が起こらないだろうということを予感させるものでした。つまり、現在のような方法で研究費を配分したらこうなるだろことなどは、ずっと前から(そういう制度にする前から)わかっていたというふうなおっしゃりようなのです。
という点にも向けられていますが、JSTの北澤先生がNHKのクローズアップ現代に出演して発言されたということは、日本の研究費システムの明日を考える上では、かなり重みのあることだと思います。
北澤先生は、「今後、研究費配分にあたっては、単に論文がインパクトファクターの高い雑誌に出ているか、ということだけではなく、もっと慎重にその中身について精査しなければならない」ということを述べておられましたし、「捏造を生まない研究室の雰囲気を醸成することが研究室主催者としての義務」というコメントもありました。
実際、東大のT教授の事例では、「監督不行届」という意味で懲戒免職になったのですから、自分の研究室にいるメンバーに目が行き届かなかったら教授の責任ですよ、と言われている訳です。
この前例というのは、本当に大きなことだと思います。
もちろん、つぶやきさんの仰る「国民が、自分たちの生命や暮らしを守るために科学技術が必要になっているこの時代こそ、税金で運営している大学や研究所を自分たちのために利用するべきだということに気がついて欲しいと思っています。」という意味で、科学技術コミュニケーションが大切だということについては、まったく異論はありません。
30分番組だったので無理だったかもしれませんが、私はやはり「雑誌」の責任はどうするのか、というツッコミが足りないのが残念だと思いました。
「面白そうな、新しそうな発見を載せたい」商業誌の下心の是非をもっと問うべきだと考えますし、もっと言えば、昨今、ライフ系では「論文になっていない(特許を取っていない)データは、学会発表しない」という風潮も排除すべきと考えます。
まずは、研究室の中で風通しの良い議論がなされるべきであり、次にはラボ外の研究者の間で忌憚のない健康な批判精神が発揮されることが必要です。
「<事実>(本当にあったこと)こそを重んじるべき」と北澤先生は言われましたが、そのことをどんな風にラボの中の人たちに伝えるかが大切ですね。