発生生物学会の将来
2007年 01月 14日
夜の会議では、「10年目の反省と将来への展望」についての議論が行われて、いろいろな問題が提起されました。
10年前にも同じように「反省」を行ったのですが、当時と現在ではいろいろな状況が変わってきていることも興味深いと思いました。
10年前の発生生物学は、私の印象では、いろいろな技術が確立して分子メカニズムの攻め方が出来上がったという段階です。
そのさらに10年前だと、まだ組織切片でmRNAを検出するin situハイブリダイゼーションがようやくできるようになりつつあり、そのすぐ後にwhole mount in situなどが可能になったのは本当に画期的という時代でした。
(さらにその前は、ウニの発生とそれ以外、という枠組みでしたね)
つまり、20年前から10年前は、発生生物学の大きなテーマに関して、関わる分子群が次々と明らかになっていった訳ですが、その後の10年で、発生生物学は、より細胞生物学的なアプローチに向かう方向と、多様性や進化の方向と、応用的な再生医療等への、3つの方向に分かれつつあると感じています。
うちの研究室は脳や神経を扱っているので、さらに、高次機能との関わりなどの方向と、細胞生物学的方向にシフトしています。
個人的に思うのは、もっと形態形成についての力学的問題を扱うとか、数学的、工学的分野との融合が必要なのではと考えますが。
この学会はおそらく日本中のライフ系の学会の中で、もっともフラットでカジュアルだと思えるのですが、中心となるメンバーが固定化されすぎていて、新たに外から入りにくい印象を持つ方もあると聞いています。
シニアな会員の方を「名誉会員」などにしないという方針や、学会としての賞は出さない、などという、ある意味、突っ張ったところもありますが。
今後はもっと違うバックグラウンドの方が参画することが必要と思います。
発生生物学会は、私の世代の女性を育ててくれた学会でもありました。
遺伝研のSさんやHさん、奈良先端のTさんなどがちゃんと生き残っています。
残念ながら、10歳年下ではどなたにバトンを渡せばよいのか、ちょっとまだ見えて来ません。
是非、元気な方に活躍して欲しいと期待しています。