キャリアパスシンポ満員御礼
2007年 02月 21日
主催者側を入れると200名を超すほどの参加者があったようです。
私は、第二部のパネルディスカッションのモデレーターをしましたが、予め、フロアから質問票を回収する形にしたのが良かったのではないかと思いました。
その中で、数の多かった質問や意見を取り上げてみます。
1)博士課程の経済的問題について
これは非常に大きな問題だと思います。
現状で、日本の多くの企業は修士卒と博士卒で初任給に差を付けていません。
(もちろん、博士卒はそれなりに期待されている訳なので、その後の昇給が変わる可能性もありますが)
したがって、博士3年(+α)の間、まったく無給だとすると、生涯賃金にするとかなり差が出る可能性があることは事実です。
ですので、現在のJSPSのDCの枠をもっと増やして頂くとか、大学独自のDCの奨学金を儲けるなどする必要があるのではないかと思います。
(これは私の「個人の意見」です)
2)博士修了者が企業から敬遠されるって本当ですか?
こちらについては、企業の方も述べておられましたが、なんといっても「問題解決力」があるかどうかなのだと思います。
誰かの手足になって働くような立場の人間であれば、学卒や修士卒で十分であり、現状をサーチして、問題点を挙げ、その対応策を考えられる人を期待している訳ですし、また、年取っている分、グループリーダーとして活躍してほしいので、マネージメント力や人間性なども求められるでしょう。
ちなみに、そのような資質は、企業で求められているだけでなく、アカデミアでもまったく同様です。
つまり、狭い専門性が必要というよりは、専門的な研究活動を通じて、それを応用する力を身につけたかどうか、が問われていると思います。
また、これからのグローバルな世の中では「英語力」も必要とされていますが、こちらについては、一般論で言えば、修士よりも博士以上の方の方が有利なのではないでしょうか。
さらに言うと、「教養」や「常識」も重要ですね。
それらを学ぶには、たぶん、他の分野の方々との交流なども必要かと感じます。
東北大学は総合大学なのですから、その強みを生かしてもらえたらと願っています。
3)就職先の情報収集について
学部まではかなり部局の「就職課」で対応されているのではないかと拝察しますが、博士課程に進んだ方については、それぞれの研究室任せであったり、先輩からの情報などの個人的なものが多かったのではないかと思います。
今後、大学としてもっと積極的に情報収集、情報発信、マッチングなどを行う必要があるでしょう(私見です)。
企業に望むこととしては、なるべく欧米のように、博士修了者・ポスドク経験者に関しては「随時募集」にして頂ければと思います。
日本では「中途採用」という言葉が存在しますが、これは、ほとんどの方々が「皆、いっせいに」就職するという文化・習慣であり、多様性を生みにくい元なのではないでしょうか。
まあ、修学旅行など団体で動くのが好きな国民性は、簡単には変わらないかもしれませんが。
4)指導教員や周りの意識、本人の意識について
例えば「キャリアパス相談」に行くと、「アカデミアからドロップアウトする」と見なされる、ということに対する抵抗感が、本人にも周囲にも大きいというのが困りものだと思います。
アカデミアは多様なキャリアパスの1つに過ぎません。
また、会社に行ってから、また大学に戻る、というようなコースを辿っている方は、結構たくさんおられることを、もっと周知した方がよいのかもしれません。
その他、アカデミアの教員の数を増やすべきでは、などの意見もありましたが、これは私にはどうにもならないことですね。
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とにかく、高度技術経営キャリアセンターが学内に周知されたのは何よりでした。
北大、早大、理研からも様子を見に来られた方がいらっしゃいました。
また、高度技術経営塾のセミナーは、今後、オープンで行うものもある予定と伺いましたので、サイエンス・エンジェルさん達なども参加してもらうと良いと思います。
もちろん、興味のある方はどなたでも!