Phonicsが教えられていない!?

朝も9時からCRESTの領域報告会でした。
自分の発表は11時からだったので、少し早起きして臨みました。
研究成果はちょうど面白い展開になっている時期でもあり、領域アドバイザーの先生を含め、好意的なコメントを頂けてほっとしました。

さて、東大の酒井邦嘉さんの「言語の脳機能に基づく獲得メカニズムの解明」の発表で、今回はphonicsに関係する脳の領域はどこか?というイメージングのデータを示されていました。
Phonicsというのは「英語の綴り字と発音との関係を教える教授法」です。
つまり、likeの[i]は[ai]と発音する(他にもMikeとかkiteとか、後に子音とeなど母音が付く場合)などのルールということですね。
で、Phonicsを知らない被検者を対象に、いくつかのルールをtrainingし、その後、さらにいくつかのtaskを行って、もちろん、コントロールをいくつか入れて脳活動(正確には脳血流)をfMRIで測定する、というパラダイムを行ったところ、結構、前頭葉寄りの方に活性が認められた、というのが研究の骨子でした。

それはそれで「綴り字と発音との関係」というルール(=文法)を意識するときなので、単に音を聞き分ける訳ではない、という意味で、前頭葉が活性化するのは当然とも言えるのですが、私がびっくりしたのは、「この会場でPhonicsを習った方は手を挙げて下さい」と酒井さんが言われ、手を挙げたのは(私を含め)非常に少数派だったという事実です。
「えっ??? なんで綴り字と発音との関係を知らなくて、英単語が読めるの?」と衝撃でした。

交流会の後、ポスター発表もあったのでラボメンバーとお疲れ様会をした際に聞いてみたところ、「習っていません」「大学受験の英語で、発音が同じものを選ばせる問題があったので、そのときに勉強しました。でも、コレとコレのこの部分が同じ発音、として覚えるだけで、実際の発音を気にしてはいませんでした」「中学、高校の英語では発音は重視されていなかったと思います」などなど、さらに衝撃の事実が浮かび上がってきました。

私自身はPhonicsという単語自体は、今日初めて知ったのですが、そういう「ルール」があることは中学時代には分かっていたと思います。
教科書にまとめてそのように書いてあったかどうかは覚えていませんが、確か、辞書の巻末などには発音記号とともに記載してあったように思います。
Nativeではない人間が外国語を勉強する際に、ただただ会話を聞いたり、本を読んだりして、そこから自分でルールを帰納的に見つけていくのは大変ですが、文法というルールを知ることによって、演繹的に理解できる世界は無限に広がります。
「綴り字と発音との関係」も同様です。
英語はルールアウトが多い言語なので、必ずしも1対1に対応していませんが(例えばheartとpearlの[ear]の発音は異なるなど)、それでも原理原則を知っているかどうかで、いちいち調べなくてもすみますし。

私にとって分からなかったのは、文字として書かれた言語を何と読むのか分からずに、どうやって理解できるのか、ということです。
文字には音が付いており、黙読していても、心の中では音読しているものだと思っていました。
そうでなければ韻を踏んだ詩を味わうことなんてできませんし、たとえ詩でなくても文章が美しいかどうか判断できないと思うのです。
これは、本当にnativeっぽい発音ができるかどうかとは、また別の次元の問題です。

英語の早期教育云々が取りざたされていますが、私は、きちんと中学時代から文法やphonicsを教えることが基本だと思います。
ちょうど算数なら「九九」のようなものですね。
いくらNativeの教師を導入しても、彼らが日本人の生徒に分かるように文法やphonicsを教えられるくらい、日本語が達者なら別ですが、ただNovaの教師のような英会話を週に数時間教えても、どのくらい応用力が生まれるか疑問だと思います。
(ちなみに英語の早期教育の弊害も脳科学から指摘されています。)
もし小学校で英語に触れさせるのだとしたら、英語の歌を歌うとか、nativeの朗読テープを聴くなどくらいでしょうか。
でも、国語や算数の時間を削ってまで英語に振り替えるべきではないと思っています。

仙台に戻ったら、今度、中学の英語の参考書を見てみないとと思いました。
by osumi1128 | 2007-03-07 01:52 | サイエンス

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