浜崎あゆみと少子化についての愚考

浜崎あゆみは進化している。
先日、何かの宣伝の大きなポスターを見かけた瞬間にそう思った。
前から、あまりに左右対称な顔の造作や、目の大きさのバランス、傷も曇りもない肌など、整形ではないのだけど、現世人類を超越したような美しさは、一体どうしてなのかと気になっていたら、やっぱりどうもバーチャルに作られているらしい。
浜崎あゆみ本人の意志か、浜崎あゆみというアイコンを利用したい集団の企みか、その両方が同じベクトルを向いているのかもしれないが、浜崎あゆみというキャラクターに理想の美を感じる大衆まで巻き込んで、どんどん進化しつつある。

「キリンの首は何故長い?」ということに対する答えとして、高い木の上の葉を食べるのに適しているから、という説明が為されることがある。
いわゆる「獲得形質の遺伝」とされる例なのだが(ちなみに、ラマルクの言った「獲得形質の遺伝」は、これとは実は異なるのだがここでは割愛)、先日読んだ『喪失と獲得』(ニコラス・ハンフリー著、垂水雄二訳、紀伊國屋書店、2004年10月刊行)という進化心理学の本にはちょっと違った見方が書かれていた。
それは、あるとき、キリンという種の特徴として「首が長い」ということがその種の個体で好まれるようになる結果、より首の長いキリン同士の交配が進み、そういう方向に進化するというものである。

現代人の進化のスピードはもっと速いような気がしてならない。
硬い食物を食べなくても生きていけるようになったため、急激に顎が小さくなったのはとくに第二次世界大戦後であるし、日本人の脚が長くなったというが、一昔前のハリウッドのスターと今のトップモデルとはえらく体型が異なる。
それは、単に環境が変化した為に形質が変わった、というレベルを超えているように思うのはうがちすぎだろうか。
明らかに、ヒトの体つきは現代人が好む方向に変化している。

顎が小さい顔はより幼い印象になり、より女性的な特徴が強化されるのだが、現代人はそれを「理想のベクトル」と見なしている節がある。
これはしばらく前にNatureの表紙になった原島博の論文にも書かれていた。
記憶があやふやで、どこまでがNatureの論文だったか、原島の本に書いてあったのか定かではないのだが、原島は、明治時代、大正時代、現代の女性の写真を集め、画像技術によりそれぞれの顔の「平均値」の顔を作った。
(ちなみに、平均化すると左右対称に近づき、美しく感じるという効果が生じる)
その顔を現代の女性、男性に見せて、「どれが一番好ましいか?」という質問をすると、性別、人種によらず、より若い印象の「現代」の平均顔(左右対称な)が好まれた。
原島はさらに、現代人の男性の顔と女性の顔の平均顔をさらにマージさせ、弾性率・女性率を変化させたいくつかのサンプルを作り、「どれが一番好ましいか?」と選ばせたところ、より女性的(幼い印象の)女性が男女ともに好まれただけでなく、男性も、より女性的(幼い印象の)印象の顔に人気が集まる結果になった。
つまり、ジャニーズ系アイドルは、確かに現代人の好みを反映しているのである。
(うちの大学にさえも、かつて私の世代には見られなかったようなカワイイ印象の男子学生が増加しつつある)

浜崎あゆみの進化のベクトルは、確かにこの方向を向いている。
ここから突然、少子化との関連についての考察なのだが、バーチャルな浜崎あゆみは理想的な美しさを持っている。
他にも、各種修正が施されたグラビアアイドルがごまんといる(らしい)。
しかし、リアルな世界にはヒトとしての浜崎あゆみはいない。
そうしたときに、じゃあ、現実に出会える異性でなんとかやりくりしようと思うか、いや、ボクに(ワタシに)とっての理想の人は、きっとどこかにいるはずだ、と追い求めるか、リアルな世界にはそんな人はいないと諦めてバーチャルな世界に生きるか、その処し方はひとそれぞれだろうが、かつては今ほどバーチャルな世界が無かった。
「そろそろ身を固めなさい」とマッチングを斡旋する叔母さんがいなくなったこともあるが、ヒトの脳が作ってしまったバーチャルな世界というのも、晩婚化、非婚化、少子化の遠因とはいえないだろうか?
by osumi1128 | 2007-03-08 02:00 | 雑感

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