乃木坂にて:新国立美術館、学協会のありかた

日本学術会議科学者委員会主催のシンポジウム「これからの日本の学協会のありかた−学協会を巡る変化とその対応−」に参加するために上京しました。
立場としては日本神経科学学会の法人化検討WGメンバーとしてということになります。

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シンポジウムは午後からだったので、少し早めに出て、隣にある新国立美術館に寄りました。
この1年くらい、乃木坂の用事の度に黒川紀章氏のデザインによる建物が徐々に出来上がっていくのを横目で眺めつつ、1月半ばにオープンしてから、いつ行けるか虎視眈々と狙っていたのですが(笑)、ついに念願が叶いました。
曲線を活かして、ガラスを多く使った現代建築で、ものすごく広い訳ではありません。
この美術館独自の蒐集品はなく、すべて企画展ということで、今回は「異邦人たちのパリ」を1時間程度見てきました。
昨年も竹橋でレオナール・フジタの展覧会がありましたが、その折りには見られなかった「白の時代」の美しい婦人の絵もあり、その他、20世紀初頭を象徴する作品が多く、大満足。
マン・レイやブラッサイなどの写真もあったのですが、ちょっと部屋が暗すぎたかも。
いつもの「この中で頂くとしたら何がよいか?」は、1つならシャガールの「花嫁」(あまりにミーハー的なのでシャガールは「好き」と言うのに抵抗あるのですが、これは結構良かったです)、もう一つはカンディンスキーの抽象画ですね。
錯視を利用したヴァザルリのものも面白いと思いましたが、ちょっと家に置くには大きすぎました。
美術館には丁度良いものも、なかなか拙宅には合いません(苦笑)。

さすがに平日の昼間なので、外まで人が並んでいるということはありませんでしたが、東京の美術館なので、やはり混んでいました。
3階にポール・ボキューズのブラッセリーがありましたが、こちらは激混み。
そんなにしてまで行くところかしら、と思いましたが、雰囲気は良かったです。
収蔵品はないのですが、ライブラリーを公開していて、さまざまな美術関係の本や資料が閲覧できるようになっている点はとても良いと思いました。

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さて、学術会議のシンポジウムの方ですが、浅島副会長のご挨拶に始まり、黒川前会長の基調講演がありました。
学会のあり方がこれまでとどのように違って来ているかについて、グローバル化、政策へのかかわり、社会への発信等のポイントを挙げられました。

続いて、今回のシンポジウムの主眼ともいえる「公益法人制度について」という講演が、内閣府官房行政改革推進本部事務局企画調整官方から為されました。
要するに、学協会が公益のために活動をしているのであれば、公益法人になって下さい、法人なので収益等については税金を頂きますよ、でも公益法人であれば寄付行為について優遇しましょう、ということですね。
公益目的事業費が50/100以上の見込みか、という点が「公益性」の判断で重要なようですが(100分の50ルール)、さらに、学会の「特別会計」などで、当面の目的が無い資産(遊休財産)が多い場合には、お金を遊ばせていないで「公益」に使って下さい、というプレッシャーもかけています。

こういう流れになってくると、手弁当で行う「研究会・勉強会・懇談会」を超える規模の学協会は、かなり事務局体制をしっかりしないとやっていけないと思います。
「法人」なのですから、当然、どこかにその「実体」がないといけませんので、事務所を借りて、事務職員を雇用する必要がまず生じます。
そうなると、学会の規模によっては会費を値上げしないととても無理、というところも出てくるでしょう。

学術会議の方から河野長先生という方が「アメリカ学協会の調査」についてご報告の講演をされましたが、米国の大きな学会は会員数が数十万人規模のものもあり、日本の学協会がそのままモデルにするには難があるのですが、このご報告を聞いて、何故、アメリカの学会でアウトリーチ活動や広報がしっかりしているのか、よく理解できました。
学会で持っている雑誌・書籍等の販売により生みだされる余剰金がかなりあり、会費収入の重要度はそれほど高くない、余剰金により十数名から200名くらいまでの事務局を抱え、社会教育や広報に充てる、ロビイストを雇う、などのことをしている訳です。
おそらく、その事務局には学位取得者やポスドク経験者もいることでしょう。

日本の学協会の発行する雑誌は英文誌であっても購読数は少なく、むしろ会計に赤字を与える費目になっていることが多いのではないでしょうか。
また、税制の問題もあり、バブル崩壊以後の経済停滞も影響し、寄付もそんなに多くありません。
経営母体として非常に脆弱といえます。

生物系ですと会員数1万5千人の分子生物学会で、専任の事務局職員がようやく数名体制になったところですが、日本化学会などでは会員数が数万だったかと思いますが、事務局は30名くらいの数と聞きました。
このぐらいの規模になると少しは何かできそうですね。
化学会ではさらに関連する22学会(今後増える可能性あり)により「化学連合」を構築する予定とのことでした。
すでに「地球惑星連合」という組織もありますね。
生物系の「生物科学連合」が同様の方向に進むことができるのかは、難しそうな気がしますが。

たぶんこれからの学協会は、手弁当で同好の士が集まって情報交換をするという小さな活動にするのか、そうでなければ、しっかりと存在意義を社会に示すような団体になるという、二極化を迫られることになりそうです。
後者の場合には、会員の互選で選ばれた運営委員がボランティアですべてのことをこなすなんて到底無理であり、事務局もただ会費の徴収や督促をしていればよいということではありません。
以前、学会業務をお世話する「学会事務センター」という組織があり、それを私物化した人がいて倒産しましたが、これからの学会事務局は、その学会の利益を考える専門の人がどれだけ意欲的な活動ができるかが問われます。
場合によっては学会の統廃合にもつながるでしょう。
by osumi1128 | 2007-03-16 19:58 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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