凍りついた香り

本日、仙台空港アクセス線が開通!
最短で空港駅から仙台駅までたったの17分!!!
札幌からの帰り、本日限りの「無料乗車券」を配布していて、「まあ、ラッキー♪」と思って空港2階から直結している駅に行きりました。
これで飛行機の出張がだいぶ楽になりそうです。
・・・と思ったのですが、「反対方向の列車が遅れているので、しばらく停車します」だとか「停止信号を感受しましたので、少々お待ち下さい」だとかで、結局30分以上かかったのでした。
しかも、途中に大きなショッピングモールも開業していて、日曜日とあって買い物客も乗車していたので、激混み。
まあ、910円分をタダにしてもらったのですから、文句を言う筋合いではないのですが。

*****
さて、以下は札幌で帰りの飛行機の搭乗を待つ間にしたためた書評になります。

その前に、ホワイト・デイにもらった『働きマン』3冊は、結局一晩で読破。
登場人物がうまく描き分けられていて面白かったです。
作者の安野モヨコは『さくらん』も描いた人と知り、ちょっと興味が沸きました。

そんな折、『博士の愛した数式』に泣いてしまった私に、学生のHさんが「先生、これ、小川洋子の新刊です」と渡してくれたのが『凍りついた香り』(幻冬舎文庫)。
「サンキュー、ちょうど今度の出張のお供に連れて行くね!」
という訳で、先週金曜日の新幹線で一気に読んでしまいました。

実は、仙台駅一階のスタバでモーニングコーヒーを飲みながら読み始めたら指定席を取っていた新幹線に乗り遅れてしまった、というくらい最初からのめり込みました(苦笑)。
かつて鼻粘膜に存在する嗅覚の神経細胞の発生を研究したこともあるため、「香り」モノはツボに嵌るようです。
ちょうど今、映画となって公開されているパトリック・ジュースキントの『香水』(映画の邦題は『パーフューム』)も不思議な魅力なのですが、小川さんの方の主人公の恋人も調香師(見習い)です。

物語は、主人公がプラハ行きの乗り継ぎ便に搭乗するところから始まります。
実は、主人公はしばらく前に恋人を自殺で亡くしたのですが、死の直前に「記憶の泉」と名付けられたオリジナルの香水を調香するに至った恋人の過去を知りたいと、恋人の実家や、かつてのガールフレンドのところを訪ねます。
分類好きで妙に数字に妙に強いと思っていたら、実は数学の天才少年として数々のコンテストで優勝していたことなど、主人公の知らないエピソードが次々と浮かび上がります。
やや精神を病んでいるらしい恋人の母親という存在が、ちょっと「博士」を思い出させます。

匂いが記憶としっかりと結びつくのは、嗅球や海馬が進化的に古い脳であるというつながりがあるからかもしれないのですが、視覚と違って、それを形容する専門の言葉が無いというのは何故なのでしょう?
必然的に、匂いは「檸檬の香り」だったり「夏の海辺の匂い」だったり「凍ったばかりの明け方の湖」(本書より)だったり、何かになぞらえて呼ばれることになります。
あるいは、「あのひとの香り」のように、きわめてパーソナルな場合や、匂いと生殖の密接な関係などの連想性から、本書は香水瓶のように、ひっそりとエロチシズムを閉じこめているように思えます。

ちょっとミステリーのような、そしてプラハの幻想的な風景がファンタジーのような、印象深い本です。
遠い記憶の中の香りを思い出しました。

追伸:
子供の「数学オリンピック」が挿入されていたのは何の本だったのか、読み終わってしばらく気になっていましたが、瀬名さんの『デカルトの密室』の中でフランシーヌ・オハラと尾形祐輔が参加していたのでした。
by osumi1128 | 2007-03-18 20:16 | 書評

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