JSTの研究開発戦略センター(CRDS)
2007年 05月 25日
私はこの季節の仙台が一番好きですね。
爽やかな空気だけでなく、日没が遅くなって夕方が長いのも、何か嬉しい気分です。
早めに仕事を終えて、オープンカフェで食前のシャンパンなどを飲んだら、気持ちよいのですが、なかなかそうもいかず……(苦笑)。
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さて、一つ前のエントリーの続きになります。
科学技術振興機構の組織として研究開発戦略センターというものがあり、いわゆるファンディング・エイジェンシーのシンク・タンクとして機能しているようです。
博士号を持った方や、ポスドク経験者、大学の講師等を務めた方などの専門家が多く、日本のトップダウンの研究として何をすべきか、についての提言や政策立案などを行っています。
例えば、先頃提出された「戦略プロポーザル」では
科学技術未来戦略ワークショップ等を通じて、科学技術の研究分野を俯瞰的に展望し、今後重要となる分野、領域、課題、およびその推進方法等を系統的に洗い出します。さらに海外の研究開発状況との比較を行い、社会ニーズやビジョンをどう実現していくかなどを考慮しながら、国として重点的に推進すべき研究領域や課題を選び、「戦略イニシアティブ」、「戦略プログラム」あるいは「戦略プロジェクト」などに仕上げていきます。
というような活動をしています。
例えば、私自身の研究に近い分野としては「認知ゲノム −脳の個性の理解と活用−」というものが2006年の「戦略プログラム」に挙げられています。
こちらが決まるまでには、論文等のサーベイによる分析だけでなく、シンポジウムやセミナー等が複数回開かれ、研究者からの意見徴集も行い、数十頁に及ぶ提言としてまとめられることになります。
そして、その中に書き込まれた重要課題が、JSTなどのプロジェクト研究のテーマとして挙がるという流れです。
今回、新たにCRESTの領域として設定された「精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出」は、ライフサイエンス分野の戦略重点科学技術の中で「生命プログラム再現科学技術」と「臨床研究・臨床への橋渡し研究」に該当します。
一番ボトムアップなのは、各個人が申請する文科省の基盤研究ですが、「特定領域研究」の決まり方もかなりボトムアップです。
通常の科研費申請シーズンに応募し、その後、20数名の審査員による書面審査、ヒアリングと続きます。
生物系の審査部会の場合には、バランスの取れた審査員の構成になっているために、意見はかなり平均化され、信じられないような結果になることはまずありません。
もう一つ言っておくべきことは、経産省のプロジェクトや、ライフ課独自のプロジェクトは、競争的研究費全体の中ではさほど大きくありません。
#先ほどから30分以上、公開されている資料をweb上で探したのですが、見つかりません(涙)。
経産省の科学技術関係予算は文科省全体の4分の1くらいだったかと思います。
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先日、意見交換のためにCRDSの方との打合せがあり、初めてCRDSのオフィスを訪れました。
都内の二番町のビルの中にあるのですが、入り口が何やら造形的で「???」と思っておりましたら、一種の「結界」なのだそうです。
つまり、その中に入ると、外の世界とは違う環境で、イマジネーションを働かせて政策立案等を考えましょう、ということらしい。
オフィスの中も、まるで外資系の会社のようで、こんなところに大学院生等をインターンシップに派遣したら、皆、就職したがるのではないかと思ってしまいました。
専門的な科学リテラシーを活かして政策立案を行うというサイエンスとの関わり方は、私はとても魅力的だと思います。
ちなみに、インテリアの費用は、役員用オフィスなどの削れるところを削って、そんなに割高にはなっていないというお話を伺いました(念のため)。