久しぶりに書評を
2007年 05月 27日
本日のサイエンス・エンジェルのオリエンテーションとスキルアップ講習会「ビジネスレターの書き方」は無事に終了。
二次募集のSAも加わって、いよいよ今年度の活動も本格的になります。
6月9日には任命式。
こちらのMORIHIMEホームページより、詳細をご覧下さい。
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さて、ここしばらくの間に読んでお勧めの新刊本のご紹介です。
ライフログの方に表紙を挙げておきます。
まずは『シマウマの縞 蝶の模様ーエボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(ショーン・B・キャロル著 渡辺政隆・経塚淳子訳 光文社)。
訳者の渡辺さんはこれまでから進化モノの翻訳を数々手がけておられますが、この原著はかなり本格的なEvolutionary Developmental Biologyの本です。
原著の題は「Endless forms most beautiful: The new science of evo devo」といって、とても素敵なのですが、なかなか日本語訳は難しいところですね。
Evolutionary Developmental Biologyというのは、生き物の発生過程を視点に入れた進化学、というような意味合いです(専門家の方はもっといろいろ言われるでしょうが)。
種を超えて共通して働くような「マスター遺伝子」、それらが集まった「ツール・キット」という概念は、エボデボで重要なものです。
(ところで、エボデボってカタカナ表記すると、どうしてもエボダイを思い出してしまいますー苦笑)
日本では、「生物学」というとかなり「生態学」的扱いで、「進化学」も「化石学」だったりして、どのように進化の過程でゲノムの変化が起き、それが多様な生物の形態や生活パターンを生みだしたのか、という観点が欠けているように思いますが、こういう本が多くの方に読まれるようになってほしいと願っています。
原著はかなりクセがある英語というお話でしたが、翻訳の日本語はとても読みやすいものに仕上がっています。
『科学の社会化シンドローム』(石黒武彦著、岩波科学ライブラリー131、イワン美書店)は、まさにタイムリーな一冊。
雑誌『科学』に連載されていたコラムを元にされたもので、著者は電子工学系の方で、現在は京都大学名誉教授。
近代科学がさらに変貌を遂げ、「社会との付き合い方」を求められるようになり、どのようなひずみが生じているかについて、データをもとに分析されています。
「STSとアウトリーチ」「人材需給を研究環境」など、科学技術コミュニケーションや、キャリアパス問題に関心のある方は必読!です。
CREST「脳学習」でもご一緒の藤田一郎先生(阪大)が、50歳になったのを記念して(?)書かれた『「見る」とはどういうことか 脳と心の関係をさぐる』(化学同人)は、認知科学の入門書としてたいへん読みやすい本です。
同様の内容は『脳の中の幽霊』(V.S.ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー著、山下篤子訳、角川書店)や、『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』(セミール・ゼキ著、河内十郎監訳、日本経済新聞社)にも含まれますが、藤田先生の本は、ご自身が視覚系の脳研究者であるために、非常に分かりやすい語り口で書かれています。
「見る」ということが、単に網膜に映像が映ることではなく、脳で処理されて初めて、色も形も認知されるということを、改めて科学的に教えてくれる本でした。
ちなみに、ゼキ先生の本は2002年に日本語訳が刊行されていますが、美術のお好きな方には超お勧めです。
ちょっとお高い本ですが、良い紙とインクを使って、ふんだんに挿絵が載っています。
表紙はフェルメールの「真珠を量る女」で、人はなぜフェルメールに惹かれるのか、という分析も。
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明日からは、福岡の発生・細胞生物合同大会と、ソウルで開催されるFAOBMBに出かけてきます。