科学研究における「不正」の構造

今日は日帰りで東京。
5号館のつぶやきさんも参加されたSTS学会シンポジウムのコメンテーターとして参加しました。
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科学技術コミュニケーション関係の知人が多く参加されていました。
初めて、東工大のN先生にお目にかかれたのが嬉しかったですね。
イリュームという、企業のイメージアップのための科学情報誌のハシリのような雑誌に多数の科学史関係の記事を執筆されていて、どんな方なのかと思っていました。
そういえば、この雑誌を読み始めたのは、第30号くらいからだったと思うのですが、当時、文科省におられたAさんのOPINIONにはかなり影響を受けたことを思い出しました。

シンポジウムの内容としては、ほぼ予測された議論がなされ、20世紀の間に生じた科学と社会のあり方の変容、「不正」の生まれる背景や社会システム、競争原理、成果主義、コンピュータによるデータの捏造・改竄、捏造か間違いか、知識の品質管理システム、などの話題が上りました。

私は、科学における「不正」問題も、キャリアパス問題も、急激に研究者人口が増えたことに一番大きな原因を求めるという立場にあります。
かつてある時期から、大学に教育よりも研究成果が求められるようになったこと、非専門家による評価が為されるようになったこと、どの大学も右へ倣いで大学院を作ったこと、増加した大学院生を吸収するためにポスドクを増やしたこと、大学院生・ポスドクの数は増えたのに教員ポストはそれに比例して増えなかったこと、これらに加えて、ライフ系ではとくに知財関係がうるさくなったことも、科学者コミュニティーの自浄作用が働きにくくなった原因かと思われます。

今後、大学院大学は研究に、学部大学はリベラルアーツの教育に特化するという棲み分けに向かう可能性について、私は残念ながら低いと思っています。
日本はスクラップ・ビルドのスクラップができない国なので。
本当はメディカルスクールなども、カレッジでリベラルアーツを学んでから入るべきと思うのですが、私立医大の授業料収入が減るので猛反対に遭うでしょうね。
by osumi1128 | 2007-06-02 23:16 | 科学技術政策

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