外国語の教え方
2007年 07月 28日
いやー東京も仙台も暑かったです(汗)。
一つ目の仕事が、理研BSIのヘンシュ貴雄先生のところでのインタビューでした。
CRESTプロジェクトのニュースレターに対談を載せているのですが、そのための取材。
中身はBrain & Mindの第6号をお楽しみにして頂くとして、1時間ほどお話しする間に「第二外国語はいつ頃から教えるべきか」という話題が上りました。
ヘンシュ先生は、お母様が日本人、お父様がドイツ人、生まれは東京ですが2歳からアメリカで育ったという方で、3カ国語がほとんど不自由ないトライリンガルの研究者です。
さらに、高校時代は水泳の選手で、オリンピック選手と互していたそうで、もちろん本業の臨界期に関する素晴らしい研究も合わせて、天は何物も与え給うたのだなあと敬服しています。
で、ヘンシュ先生はその研究成果から「臨界期の終わる12歳くらいから外国語を教えるのはナンセンス。臨界期の間に教えるべき」と主張されます。
「でも、母語がしっかりしないうちに、第二外国語を習得させようとすると、脳の中で混乱が起きるというお話もありますよね」
「それは教え方が悪いからです」
ヘンシュ先生が小さいとき、お母様と話すときは日本語、お父様とはドイツ語、お友達や学校では英語、というルールが徹底していたとのことで、そうすればそれぞれの言語のルールをきちんと身につけることが可能と言われます。
ただし、現在のご家族は、奥様がイタリア人で、3人のお子さんが1年前くらいまでは日本で育ち、今はアメリカということで、上記のような「ルール」は徹底できていないということでした。
つまり、子供同士が会話をする際に、ちゃんとしたお手本に則らない会話を覚えてしまうということなのだと思います。
こんな例も挙げられました。
私も聞いたことのある話でしたが、臨界期のアメリカの子供に毎日1時間程度、中国語を母国語とする人と遊ばせるということを50日分だったかさせると、ほとんどnative Chineseと変わらないくらいの中国語の聞き取りと発音ができた、というもので、たぶん同様の発達心理学系の研究は日本でも為されていたと思います。
このとき、生身の人間とコミュニケーションする、という点が大切で、対照群として「1時間ビデオで中国人の話す中国語を聞いていた」のでは効果が無いという結果でした。
私自身の
確か、『三匹の子豚』などもありましたが、一番のお気に入りは『ピーターと狼』で、音楽と語りがあるものでした。
モノラルのステレオで繰り返し聴いていたのだと思います。
小さいときの記憶がほとんどない方なのですが、そのメロディーはしっかり記憶されていますね。
その後、小学校の3年生から、お友達のお母様が自分の娘だけに教えるのは難しいので、他の子も一緒にということで、英語のレッスンを週1回受けましたが、お母様はもちろん日本人の方でしたので、完全なnativeの方に教わった訳ではありません。
中学校ではLLの時間があって、テープでnativeの発音を聴いたのと、『百万人の英語』というラジオ番組を毎日必ず聴いていました。
ですので、たぶん平均的な日本人の方よりも英語にexposeされたのはやや早く、また、義務教育で教えられる以上に自分でも勉強したとは言えると思います。
それができたのは、外国語が好きだったからでしょうね。
ヘンシュ先生を見てしまうと、「やっぱり英語はなるべく早く教えなければ」という方に傾きがちなのですが、小学校の義務教育の中で、一律に、他の教科の時間数を減らして教えるのが果たして妥当なのか、ということについては、難しいなと思います。
そもそも、日本の初等教育では本人の熟達度とは関係なしに、学年ごとで進んでいきますので、分からない子はますます分からないことが多くなるような気がします。
知り合いのアメリカ人研究者JRさんは「うちの息子は5歳からprimary schoolに入れたよ。僕もそうだったからね」と言ってましたが、アメリカでは親が「うちの子は年齢に比して理解力が高いので、上の学年に入れても大丈夫なのでそうしたい」と主張すれば、とりあえずその希望を受け入れてもらえます。
その上で、もし付いていけない様子が見られたら、「やっぱり戻した方がよい」という指導が入る訳ですし、さらに「飛び級」するケースもあります。
そうやって、23歳で博士号取得、なんて人がごろごろしてますし、26歳でassistant professorという知り合いもいます。
「ノーベル賞の受賞対象研究のかなりの部分が30代で為された」という統計を考えると、たしか以前のキャンペーンで「日本人ノーベル賞30名!」という目標を達成したいのであれば、このような早期教育や英才教育を真剣に考えないといけないもかもしれません。
それは、「多様な価値観」「それぞれの個性」を認めるという了解がなければ成り立たないのですが。
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ところで、しばらく前のエントリーでもTBしました、5号館のつぶやきさんの20%ルールって 【追記:関連記事】というエントリーに付いたコメントが100を超えたそうです。
もはや、元々の「20%ルール」のところについてのコメントではなく、一般的な「大学院生・ポスドクキャリアパス問題」として盛り上がっているようで、それはそれで結構なことと思うのですが、横で眺めていて「これではやっぱりアクションにつながらないなあ……」と感じています。
関連して、日経BTのBTJジャーナルNo.019にポスドクのキャリアアップのことが掲載されています。
他の記事を含め、やたら知っている方が出ていてびっくりですが、そういえば、本日(7/27)の「爆笑問題のニッポンの教養」のゲストは解剖男の京大の遠藤さんでした。
(来週はアンドロイドの石黒さんだし。)
オオアリクイやパンダの骨格、ゾウだったかなんだったかの腎臓などがある研究室が印象的。
番組の最後の方で「動物園は教育機関である」というと「いや、エンターテイメントでしょ」と太田に言われ、「いや、教育的な点が大事で、だから国からの援助が必要!」と真剣に主張されていました。