京都に行ってきました

数日、京都に出張しておりました。
仕事をいくつかこなして(後述)本日、さあ、予約した便より早めに帰ろうかと思いましたら、航空会社のサイトから予約したのではなかったため、「変更不可!」ということに気がつき、腹をくくって(?)京都市美術館にて「フィラデルフィア美術館展」を観てきました。
(今回の「もし下さるというなら」はクレーの作品でした(タイトル忘れ)。下地にいろいろな色を塗ってから、その上を黒で覆い、さらに鋭い筆記用具で描くと黒の部分が削り取られて、下の色を浮かび上がらせるという技法。たしか、小学校の頃にお絵かき教室でしたことがありますが、独特のタッチになります)

そもそも、仙台から京都の出張はデフォルトがJR新幹線の乗り継ぎのはずなのに(時間的にはその方が長いのですが、乗り換えが便利なので)、何故、航空機にしたのかも不明。
ネットでクリック一つで予約ができるために、熟考なしに決めてしまったという典型例、かもしれません。

友人の研究者で忙しい方達には「すべて秘書さん任せ」で、交通手段やら宿泊先やらぜーんぶ手配して頂く方がおられます。
出張前日に「ハイ先生、明日の京都出張のお泊まりは○○ホテルになっています。こちらがアクセスの地図です。チケットはこちらです。学会会場とご講演時間などはこちらをご覧下さい。では、どうぞお気を付けて」とセットで渡されるのです。
私は「自分で決めたい派」(かつ、直前まで予定が決まらない)なので、未だにほとんどの場合、自分で手配していますが、最近はいくつかの用務を続けて行き、さらにその費用の出所の分配がややこしいこともあったりすると、出張の書類をお願いしている秘書さんに手配して頂いた方が、秘書さんがちゃんと把握できてよい、というようなケースも出てきました。
やれやれ……。

* ****
さて、京都の用務は再生医科学研究所主催の国際シンポジウムでの講演、再生研の外部評価、ジェンダー関係企画での講演となっておりました。
シンポジウムは、まあ、普通に英語の講演だった訳ですが、その後の外部評価は日本人4名、外国人4名(アメリカ3名、スウェーデン1名)の評価委員での会議でした。
外部評価はいろいろなケースで何度か経験がありますが、英語で、というのは今回初めて。
一人10分の発表を足かけ二日で15人以上聴くのはなかなかハードでしたが、非常に勉強になりました。

研究機関のアクティビティーを上げるのに、さらにどうすればよいのかについて、欧米の方の意見は極めて明快でした。
研究室の枠を超えた情報交換、交流を多くすること。
年に一度のリトリートも良いのですが、例えば、ある大学の方は「ブラウン・バッグ・ランチ・ミーティング」をユニット(専攻くらいの単位でしょうか)ごとに毎週木曜日に開くという例を示しておられました。
PI以外の人が発表するのを聴くとともに、「あそこの研究室にはこんな良い機械がある」「誰それさんはこのテクニックが抜群に上手い」「彼(彼女)は意外な知識が豊富」などの情報を、気軽に得ることができるというものです。
(「ブラウン・バッグ」というのは、買ったお昼ご飯を入れる茶色い袋のことです。つまり、食べ物持ち込みで行うセミナーなのですね。)
東北大学では発生生物学の研究室が多いので、うちの研究室が仙台に立ち上がってから、Wさんが「インターラボ・ミーティング」として、毎週月曜日の夕方にほぼ上記の「ランチ・ミーティング」の内容のことを行っています。
違いは「ランチのあるなし」ですが、キャンパスが分かれた研究室が集まるので、ランチ時というのはちょっと無理があるので仕方ありません。
ただ、「夕方5時以降からの会議・セミナーを避ける」というのは、子育てと両立させるのに必須条項なので、その点がちょっと不満。
難しいですね・・・

また、若手の独立性を高めると同時に、アドバイザー(メンター)が科研費の書き方や学生の指導の仕方などの指導をすることも言われていました。
こちらは大賛成なのですが、研究室の枠を超えた仕組みを作るのが、日本ではなかなか難しそうな気がします。
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もう一つの用務であったセミナーの方は、長谷川真理子先生の「性差の起源を探る:生物学的性差と社会」というご講演の途中から参加。
京大はよく行きますが、法経エリアに入るのは初めて。
今回の講演は「認知機能の性差」という、作りおろし?のPPTファイルで初めてのプレゼンでした。
前半の「性決定の仕組み」のあたりは普段授業でも扱っている内容に近かったので、まあ良かったのですが、後半の認知機能の性差に関しては、いろいろな研究のメタ解析的扱いで、内容も「性差には生まれと育ちがどのように影響するか」などが含まれていたため、後で文系の方から「もう少し話し方を工夫すべき」とご指摘を受けました。
こちらとしては、「<生まれ>を重視した研究もあれば<育ち>を重視した研究もある」ということを提示したいというのが意図だったのですが。
もっとシンプルに「生物学的性差はどのように生じるか」あたりについて、「育て方でどちらの性にもなりうる」というJ・マネーの学説の否定をきちんと説明する、という講演でも良かったかもしれません。

全体討論の時間が短くなってしまったのですが、そこで50代後半くらいとおぼしき男性(見た目からの判断)が質問に立ち、「今回の二人の講演で、性差は非常に大きいことがよく分かった。だから、男は男らしく、女は女らしく生きるべき」との主張(まとめるとこんな感じ)を延々数分に渡ってコメントされ、会場一同がしらけたムードになっていました。
「あの人はいつでも来るんですよ」
どうも「その世界」では有名人らしい。

こういう展開が好きではないので、私の最後のメッセージは「性差がどのように生じるかという科学的知見と、政治や行政、研究環境整備等をどのように按配するか、は分けて考えるべき」というものにしたのですが、その部分の説明が足りなかったのは反省点。
閉会のご挨拶で、物理学会会長でもある坂東昌子先生(愛知大学)は、お話しになりたいことが溢れているご様子でした。

懇親会は京大正門近くのカンフォーラというお店の奥でした。
「今回は100名を超える人が参加していたようです」と主催者の方。
京大で社会学を研究されているO先生は「もっと文系・理系両方が集う会でこの問題を扱いたい」と仰っておられました。
by osumi1128 | 2007-09-22 23:18 | 旅の思い出

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