統合失調症と脂肪酸
2007年 11月 16日
本当は本学の川内記念講堂を使用する予定だったのですが、ただ今百周年記念の改修工事のために使えず、全校生徒の総合学習の時間を体育館で、という設定になりました。
一女はこの5年間スーパーサイエンスハイスクール指定校だったために、理系の進学率が増えたそうです。
やはり効果があるということですね。
体育館は当然ながら講演のために造られた建物ではないので、どうしても声が反響します。
また、1000人の聴衆を相手に行う講演は、自分の声が向こうまで届いてから、次の言葉を喋るようにしないといけません。
それでも、数分喋ると何となく遠くの方からざわめきが多くなってきます。
ここでめげては駄目で(助手になりたての頃、90分の授業をこなすのがとても辛かったことを今でも思い出します。)、ときどき「これこれ、知っているひと、手を挙げて」などと質問を投げかけたりして注意を呼び覚まします。
ちゃんと手は挙げるので、要するに聴いてはいるのですよね。
お家でお喋りしながらテレビを見ている感覚に近いのでしょう。
ところで、一女の校長先生は片足に松葉杖の方でした。
どのような経緯でそうなったのかについては存じませんが、こういう校長先生の元で育つ女子高校生たちは、障害を持った方と共生することが普通という感覚になるのかもしれませんね。
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本日は、今週オンライン発表された共著論文のご紹介です。
理化学研究所の吉川武男先生のところで為されている統合失調症の原因遺伝子を探る一連の研究の中で、「神経新生の低下が発症の脆弱性に関わる」という仮説に関係する部分について、CRESTのプロジェクトとして共同研究させていただきました。
1000匹を超える2系統のマウスを用いた遺伝学的解析で、統合失調症の生物学的な指標の一つと考えられる「プレパルス抑制」にもっとも関係する遺伝子座を突き詰めていくと、脂肪酸結合タンパク質をコードする遺伝子Fabp7が浮かび上がったのですが、この脂肪酸結合タンパク質は神経新生に必須ということを見出しました。
精神疾患に遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っていることの良いモデルと思われます。
詳しくは、こちらのプレス発表をご覧下さい。
元論文はこちらになります。
共同研究が開始してから3年、投稿してからも1年以上かかった超大作です。
筆頭著者の方の学位などが関係しないので、時間をかけても良い作品を作り上げることができました。
発表したPLoS Biologyというのはオンラインのみのジャーナルでまだ新しいのですが、Trends in Geneticsなどの編集者を引き抜いたりして良いオフィスやシステムを作っているようです。
中でも、サイエンス・ライターによるSynopsesというコーナーがあり、今回の論文も取り上げてもらいました。
著者自身が一般読者に向けたAuthor Summaryというのも、中身のSummaryとは別に書くのですが、Synopsesについては公益性を重視した雑誌作りとしてとても参考になります。