グローバル化を阻むもの
2008年 01月 27日
こちらは昨年は福島の方で開催していただいて、今回は仙台の方がお世話係になっての開催でしたが、若手の発表、若手の座長ということで盛り上がりました。
さて、1つ前のエントリーで「無事に終了」と書いたのですが、実はさにあらず。
木曜日、金曜日の蔵王が吹雪きだったことは仕方ないとして、一つ大失敗をしてしまいました。
旅費の手続きに必要な書類として、コピーを取るために外国からのゲストスピーカーのお一人のパスポートを水曜日の朝に仙台のホテルを出るときに預かったのですが、それを返却しないまま、その方は東京の用務に向かわれました。
その晩、パスポートが無いことに気付いてこちらに連絡され、「すみません! それは私がまだ預かっています!!!」ということが判明。
幸い、出国は日曜日の朝なので、時間的な余裕はそれなりにあったのですが、宅急便で送るのはなぁ、と思っていたところ、東京エリアからの参加者のMさんが、「僕は金曜日の夜に帰るので、そのときに届けましょうか?」と申し出て下さいました。
昨晩、ゲストスピーカーからも受け取った旨のメールが入り、一件落着。
やれやれ……。
Mさん、本当に有難うございました。
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上記の失敗の言い訳をするつもりはないのですが、実は今回、グローバルCOE主催で国際カンファレンスを開催するにあたり、事務処理等でさまざまな困難に直面し、パスポートの返却忘れも、若干の関係があります。
そもそも、日本の多くの大学では、海外への送金ができません。
したがって、講演者を招聘する際には、その費用は日本円で支払うか、日本の銀行口座への振り込みになります。
で、航空機等の運賃について、見積もりの書類も必要なので、今回は、日本の旅行会社を使うことにしました。
さて、その航空運賃なのですが、例えば、サンフランシスコの方に来ていただくとしたら、自宅(もしくは大学)からSFO空港まで、まあ、普通は自分の車で行きますね。
車は駐車場に停めておくでしょう。
その駐車場代は旅費には入れられないのですね。
で、成田から仙台までは、「最低運賃」にするために、(書類上)上野から(成田エクスプレスではなく)京成ライナーを使っていただくことになります。
成田ー仙台便の連絡が良かったとしても、これは認められません。
さて、仙台、蔵王の滞在が4日だったとします。
この費用はどう計算されるかというと、まず、招聘者の「略歴」の提出を求められます。
諸外国では年齢はかなり個人情報なので、略歴にも書かないことが多いのですが、それも出せ、と言われます。
まあ、普通は「手続きに必要なので、教えてね」と訊けば答えてくれますが。
なぜ、年齢や略歴が必要かというと、それによって、「日当・宿泊費」の単価が計算されるからです。
つまり、実際にかかった費用が支払われるのではなく、若い人、Assistant ProfessorとシニアなFull Professorでは日当・宿泊費が異なるのです。
さて、上記のように、駐車場代や仙台ー成田便を申請できないことなどもあるので、「謝金」を支払ってカバーしようと考えるとします。
すると、ここに「税金」がかかってきます。
招聘者は当然、アメリカ在住なので、税金はそちらに払っているので、日本に支払うのは適当ではありません。
そのことを証明するために、Internal Revenue Serviceというところが発行する証明書が必要です。
単なる「税金の支払い明細」等では駄目だと、仙台中税務署から言われました。
これを手に入れるには1ヶ月くらいはかかるとのことです。
もし、この証明書を提出できないと、税金は、謝金だけでなく、旅費、宿泊費等すべて含めた費用全部にかかってきて、それを誰かが支払わなければなりません。
(今回の場合には、私が拠点リーダーですので、私に払えということでした。大学が被ることができないので。本当に払わなければならなくなると数万円に上ります)
で、「証明書が必要なので、持ってきてね」とメールには書いたのですが、やはりそんなことは一度もしたことがなく、持ってきた書類はやはり訳にたたないということでした(溜息)。
さて、実際に招聘者が来ますと、本当にその人が日本に来た、ことを示す書類として、パスポートの顔写真等の頁と、入国スタンプが押してある頁をコピーする必要があります。
(これは、まあ、仕方ないかなと思います)
さらに、航空券の全体のコピーと半券(stub)を出せと言われます。
航空券がどんどんEチケット化している時代に、そんな紙はなくても飛行機に乗れてしまうのですが。
とどのつまりは、復路の半券も帰ったら送れ、と言われます。
(ちゃんと来たかどうかは重要ですが、出国したかどうかは、本来、国際カンファレンスを開催することと何ら関係ないはずですし、カンファレンスでちゃんと講演を行えばその費用に見合う労働をした訳で、帰ってからまで何かしなければならないのはtoo muchだと思います)
……という訳で、外国人を10名呼べば、上記の手続きが10倍かかることになります。
こんな状態で、「グローバルCOE」として、より国際的な教育研究拠点として活動せよ、というのは矛盾もよいところです。
また、現時点では事務方の大多数の英語力が、上記のようなやりとりを直接招聘者とするレベルにはないため、本来、研究者がしなくても良いはずの用務に時間を取られることになります。
つまり、日本全国で研究力が損なわれている訳です。
日本が本当に国際化を目指すのであれば、こういう事務処理の合理化を図らなければなりません。
海外からの招聘にあたって必要な書類は、旅行計画、航空券等の領収書、パスポートの写しくらいで良いと思いますし、ホテル代や食事代はかかった分を大学が直接支払えば済むことです。
国際競争力をつけるということは、無駄なところにエネルギーを使わないことだと思います。
どうも、日本は参勤交代の時代から、必要ないことまで真面目に仕事にしてしまう傾向があり(鎖国の世の中で徳川安泰のためには良い制度だったかもしれませんが)、今、変えなければ駄目だと感じます。