グリア細胞

仙台市内ではこの週末が桜の見頃。
一昨日はまだ雨模様だったのですが、昨日はすっかり上がって、きっとあちこちでお花見が催されたことでしょう。
医学部キャンパスの生協前にある大きな枝垂れ桜の下でも、うちの学生さんたちが宴会していたようです。

この間もこのブログに書きましたが、医学部キャンパス敷地の南側に大きな木蓮の木が3本あって、うち1本が白で、2本は紅なのですが、こちらもちょうど盛りを迎えつつあります。
高校の校章が辛夷(こぶし)で、木蓮の仲間なので、それなりの思い入れがあるのですが、コブシとモクレンの違いがどこにあるのか、把握できていません(笑)。

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週末、仙台にいるときには「お片付け」をすることにしています。
昨日はロングブーツを仕舞おうと思い(ギャルと違って、ロングブーツはお洒落ではなく防寒のために履きます。よって、蒸れそうな真夏に履いたりはしませんー笑)、靴磨きを何足分かまとめてしました。
靴墨をつけて布で拭いていくと、やがて綺麗な光沢が出てくる瞬間があって、結構ハマリます。
磨き物系の家事が好きですね。
ウルサイ音のする掃除機は、あまり好きな方ではありません。
静かな掃除機をどなたか開発して下さらないかしらん?
(当面は、ルンバなどのお掃除ロボットに任せて、いない間にやってもらう?)

それでひらめいたのですが(正確に申しますと、今朝、ブログのネタに何を書こうかなと考え、靴磨きを取り上げようと思ったときに並行して、ですが)
グリア細胞はメインテナンス隊!

このキャッチフレーズはなかなか良いのではと思いました。

先日も書きましたが、神経細胞の約2倍(よく言われるのは10倍。50倍と書かれているものもあり)の数があるグリア細胞ですが、一般の方への認知度が今ひとつです。
日本語では神経膠細胞という訳語が当てられていて、もともとの語源である「にかわ」というのは、神経細胞の隙間を埋めているだけと思われていたからなのですね。
文部科学省の科学研究費の「特定領域研究」でもグリアーニューロン回路網による情報処理機構の解明という班が立ち上がっていて、3月8日のサイエンスZEROでも取り上げられていましたが、まだまだメディアでの取り上げられ方は少ないですね。

一般的には「神経細胞の働きを助ける」という説明のされ方が多いのですが、本当はただ、ニューロンにお仕えしている、というよりも、もっと自律的に働いている役者です。
大きく分けて3種類の仲間がいて、一番数の多い部隊はアストロサイト(星状膠細胞)で、一番多機能です(後述)。
次の仲間はオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)で、こちらは神経細胞の軸索というケーブルを取り巻いて絶縁体を形成し、神経伝達のスピードを上げて新幹線並にしています。
最後は、一番小さなミクログリア(小膠細胞)という仲間で、脳の警備員のように、損傷などの事故が起きたり、細菌が侵入してしまったことをいち早く見つけて防衛する働きがあります。

アストロサイトは本当にマルチな働きをしています。
アストロサイト部隊の間にもネットワークがあって、広範囲に情報伝達をしますし、血管の周囲にまとわりついていて、血流を調節します。
神経細胞の間のつなぎ目である「シナプス」の周りにも存在して神経伝達を調節し、ブレーキ役として働きますし、シナプス形成を促すことも分かってきました。
さらに、アストロサイトは神経幹細胞としても振る舞い、必要に応じて神経細胞を生みだすこともあります。

このような多様な働きをするグリア細胞は、さまざまな専門集団から成る「メンテナンス隊」と捉えるのはどうでしょう?
記憶や学習などの脳の高次機能発揮のために、状況に応じて働く大事な部隊です。

*****
こんなことを考えたのは、先日受理された学生さんの論文がアストロサイトの増殖・分化についてのものなのですが、良い作品なのでプレス発表を予定しており、その「プレス用原稿」に関して、広報担当のNさんからダメだしされていて、もう少し練らないと、ということで、引っかかっていためです。
ちょうどコンピュータのモニタの裏画面でもいろいろな処理が行われているように、無意識下でも脳は働いているということですね。

あ、大学でも「メンテナンス隊」を多機能・高機能にしていただくのが、ニューロン達の働きを良くしてcreative & innovativeにするのに大事かも。
by osumi1128 | 2008-04-13 09:59 | サイエンス

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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