『クジラを追って半世紀ー新捕鯨時代への提言』

月曜日は浜松医大の精神科に呼ばれ、セミナーをしてきました。
浜松で新幹線を降りると、駅の中にKAWAIのピアノやSUZUKIの軽自動車がバーンと展示されています。
駅前もとても開けていて、景気がよさそう。
30分タクシーに乗っている間、ずっと運転手さんのレクチャーを受けました(笑)。
人口は、あちこち合併して今82万人。
そのうち2万人以上がブラジルからの移民とのこと。
いろいろな工場で働いているらしい。
市内にブラジル人用の学校が4つもあるというのは、かなりインターナショナルですね〜。

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さて、うーん、本日、やっぱり見てしまいました。
クオリア日記で紹介されていたプロフェッショナル仕事の流儀~茂木健一郎の脳活用法スペシャル~
数十分の移動の時間たりとも無駄にしないパワフルな生き方は凄いですね〜。
でも「暗記」の際に声を出したり、字を書いたり、と、複合的に脳機能を使いながら覚えると良い、というのは、誰に教えられた訳でもなく、確かに昔からやっていましたね。

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もうそろそろ、国際捕鯨会議(IWC)が開催されるシーズンです。
鯨類資源についての研究者である父の影響をどうしても受けていますので、一方的な反捕鯨報道には納得がいかないのですが、最近の若い方達の食生活からはクジラの影が薄くなっているので、日本の中でもマイノリティーになりつつあるのかもしれません。
例えば、5号館のつぶやきさんのところでも以前にザトウクジラには世界的アイドルがいたというエントリーで、調査捕鯨に対する批判が述べられていました。

半世紀以上、クジラの研究を行ってきた父は、勤務先が水産庁の研究所だったので、私が物心ついてから毎年、このシーズンにはIWCで海外に1ヶ月ほど出張していました。
その会議を、今年から参加しないことになったと母からメールで聞いたところです。
ちょうど、昨年に喜寿も超え『クジラを追って半世紀ー新捕鯨時代への提言』(大隅清治著、成山堂書店)という本を先日上梓したので、一区切りだったのでしょう。

本書には、フィールドワークを中心とした研究を行う科学者という立場で水産行政・外交や啓蒙活動に関わってきた人間の歴史が書かれています。
数ヶ月前に、「こんど本を出すから、よかったらブログで取り上げてほしい」と言われ、そんな、身内の本を紹介するなんて恥ずかしい行為だなぁ……と、あまり気乗りはしなかったのですが、なにせ親不孝な娘なので、せめてもの恩返しと思い、本日取り上げる次第です(いえ、実はそれほどのものではありませんが(^_^;)。
日本でも行われる反捕鯨報道に対して、科学者サイドからの意見を表明することに少しでも貢献できればと思っています。

おそらく、最も問題とされているのは、いわゆる「調査捕鯨」の是非についてでしょう。
IWCに加盟している国が批准している国際捕鯨取締条約(ICRW)の第8条という条項があります。
第8条
1. この条約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適当と認める数の制限及び他の条件に従って自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認可する特別許可書をこれに与えることができる。また、この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。各締約政府は、その与えたすべての前記の認可を直ちに委員会に報告しなければならない。各締約政府は、その与えた前記の特別許可書をいつでも取り消すことができる。

2. 前記の特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、取得金は、許可を与えた政府の発給した指令書に従って処分しなければならない。

3. 各締約政府は、この条の第1項及び第4条に従って行われた研究調査の結果を含めて鯨及び捕鯨について同政府が入手しうる科学的資料を、委員会が指定する団体に、実行可能な限り、且つ、1年をこえない期間ごとに送付しなければならない。

4. 母船及び鯨体処理場の作業に関連する生物学的資料の継続的な収集及び分析が捕鯨業の健全で建設的な運営に不可欠であることを認め、締約政府は、この資料を得るために実行可能なすべての措置を執るものとする。


このように、きちんと国際的な法的根拠をもって、最大限の科学的調査を行っているのが「鯨類捕獲調査」です。
上記2に従うことにより、調査を終えたクジラの肉や各種組織が市場に出回ることになるのであって、「商業捕鯨」のために行われるのではありません。
また、附表によって、捕獲禁止鯨種の設定、捕獲頭数の制限、漁期、漁場の制限、捕獲できる体長の制限、乳呑み子を伴う母親の捕獲禁止、などの厳しい操業規制が盛り込まれています。

詳しくは本書を読んでいただくとして、戦後の食べ物が足りない時代に育った父の夢は「クジラを家畜化する」ことです。
先日の「毒餃子事件」をきっかけに、日本の食糧自給率がいかに低いかについて、世間の関心も集まったと思いますが、これまでのいくつかのキーポイントにおいて、日本の漁業に関する外交の失策も、フードマイレージを大きくしている原因でしょう。
(このあたりの歴史的事実も本書の中に含まれます。)
クジラは食物連鎖の頂点に近いところにいますので、実は「鯨類が年間に捕食する餌の量は人間が海から利用する水産物の量の数倍になる」(21 鯨類の捕食量)のです。
ヒゲクジラ類はウシと同じような家畜化が望ましく、イルカ類はイヌと同じような家畜化が考えられる。生物学的にみて、家畜化に適していると考えられるミンククジラは、これを原種として、ウシのように、肉用にも、乳用にもなるであろう。また、バンドウイルカは、イヌのように訓練すれば、魚類の誘導、海洋開発、競技用、ペット、などに役立つ。(25 クジラを家畜化する夢)

これまで、名古屋港水族館、八景島シーパラダイスなどでも構想が持ち上がったらしいのですが、未だ実現には至っていません。
なにせ、巨大なクジラですから、海の牧場もそうとう広くないといけないでしょうね。
壮大な構想です。

父は『クジラは昔陸を歩いていた』(PHP文庫)『クジラと日本人』(岩波新書)をはじめ、何冊かの一般向けの書籍を出していますが、それに比べますと、本書は、はっきり言って読みにくいです(笑)。
いわゆる「クジラ」のお話というより行政や外交の話が多く、IWC関係の委員会等の略称はごちゃごちゃしているし、肝心のICRWの条文が載っていないし、帯に至っては12名もの方の推薦を頂いていて、私の目から見ると「???」と思う部分も多いのですが、このような、どれだけ売れるか分からないような本を出して下さる出版社があり、推薦文を寄せて下さる方がいらっしゃるのは、有り難いことなのだと思います。

 完成していない仕事がまだ山積していて、過去のことを振り返る余裕もないし、そんな歳でもないと自分では思っているのだが、「そろそろ遺言を書いて置くべきですよ」と口の悪い後輩から直言されるようになってきた。そうい言われてようやく重い腰を上げ、残務整理の心算で、少しずつ過去を振り返り、未来に希望を託して、いくつかの文章に纏めてみた。そして、この度、成山堂書店の暖かいご好意によって、やっと出版することができた。(はじめに)


巻末には、本書の記載の根拠となる、これまでの200編以上の論文や、本書に関係する記事等の出典が載せてあります。

(あーー、やっぱり身内の本の書評はやりにくいです……。)
by osumi1128 | 2008-04-30 00:41 | 書評 | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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