CREST12シンポジウム〜徳島へ
2008年 05月 27日
プログラムはこちら。
JST主催、文科省後援となっていて、目的としては、CREST(戦略的創造研究推進事業)というプログラムが「出口を見据えた研究」を行うものであるということ(どちらかといえば研究者向け)と、例えば山中さんのiPS細胞など、CRESTの支援により優れた成果が挙がっていること(どちらかといえば市民向け)をアピールするということにあったと思います。
展示ブースも設けられて、昼休みも兼ねた時間に「脳学習」領域からは伊佐先生と酒井先生がポスターを説明されていました。
かなりの人出だったように感じます。
午後に文科省の研究振興局長からのご挨拶の後、山中さんとともに2006年のCellの論文の筆頭共著者(しかもtwo author-paper)である高橋さんの講演がありました。
冒頭の「本来であれば山中が発表する予定でしたが、体調不良のために代理で話します」という言葉は、とても重いものだと感じました。
高橋さんは「これ以上、先生(や自分たち)にあまり負担をかけないで下さい」と率直に言いたかったかもしれません。
大きな学会やシンポジウムにおける山中さんの発表は、この数ヶ月で相当数に上ります。
研究室には、各種報道の取材やら、見学やらが未だに多数あるということで、山中サポーターを自認する私としては暗鬱たる気持ちになりました。
多くの市民の方々も感心を持っていただくこと自体は、科学コミュニケーションを推進する上ではプラスなのですが、それによって研究活動に支障が出るようでは困ります。
あるいは、iPS細胞を産業に生かそう、やら、山中さんにノーベル賞を取ってもらおう、やらという魂胆がある方々にとっても、山中さんが身体を壊すレベルになってしまっては本末転倒です。
とはいえ、あのCellの論文の筆頭著者である高橋さんご自身の発表を聴けたのは、私にとってはとても有意義でした。
パブリックのことをよく考えられたスライド構成でしたし、若い方ならではの適度な緊張感と、ご自身のお人柄と思えるユーモアがあって、良い発表だったと思います。
山中カクテルと呼ばれる4つの因子(Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4)の同定に至るお話では、24因子に絞った段階から「全部、混ぜ合わせて入れてみよう」という方針が思いの外、うまくいったというところまでは話されたのですが、その次のステップについては時間の関係もあってか、話されていませんでしたね。
実は、ここがなかなかに「正解への近道発見」の面白いところなのですが。
もしかしたら、近刊の『iPS細胞ができた!—広がる人類の夢』(山中伸弥、畑中正一著、集英社)に書かれているかもしれません。
興味のある方は是非!(私もまだ読んでいないのですが……)
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さて、その後、近所でもう一つ立ち寄る先がありましたが、駆け込みで羽田からの徳島行きの飛行機に飛び乗りました。
日本発生生物学会大会(国際発生生物学会大会と合同)に参加のためです。
今回の大会長は野地澄晴先生で、私にとっては恩人の一人です。
自分の研究者としての基礎は発生生物学会によって育んで頂いたのですが、ちょうど、大学院の最終年から助手にかけて、レチノイン酸受容体の発現に関する研究について共同研究をさせて頂いたことがきっかけで、研究業界のcutting edgeに身を置くことのドキドキ感を味わわせて頂きました。
また、現在の研究の流れを作るもとになったPax6遺伝子の変異に関する研究も、野地先生らとの共同研究でした。
明朝9時(!)からシンポジウムをオーガナイズしています。
うちのメンバー数名も午後にワークショップ、ポスターで発表。
研究者にとってのハレの日ですね。