シンポジウム:遺伝と環境の相互作用
2008年 07月 26日
11時近かったかと思いますが、幸いまだ研究室にいた学生さんに「明日の朝、貴方のiBookを貸して」とお願いして、事なきを得ました。
2限目には東大の武田洋幸先生をお招きして特別講義。
ゼブラフィッシュの発生遺伝学を用いた体節形成のリズムについての研究を紹介されました。
体節というのは背骨や筋肉をつくる元になる組織ですが、初期発生においてマウスなら120分に1個、ニワトリは90分、ゼブラフィッシュは30分に1個の体節が、前から順に作られていきます。
つまり、時間的、空間的に刻まれていくのですね。
この仕組みを調べてみると、マスター時計はなくても細胞の振る舞いを同調させるロバストなメカニズムがあることが分かりました。
事前に工学部系の学生さんにもお伝えしておけば良かったなと思いました。
自己組織化を伴うデザインを生物に学ぶことは面白いのでは?
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はやて100号で東京へ。
9:16に仙台発で東京駅へは9:04に到着、というと「え? そんなに近いのですか?」と驚く方が、そこそこいらっしゃいます。
本当です。JR東日本によってきちんと運行されています。
ちなみに、8:15発はさらに速く、ノンストップで9:51東京着です。
本日の用務は、科学技術振興機構の社会技術開発センターの事業「脳科学と社会」研究開発領域のシンポジウムでの講演。
「領域架橋型シンポジウムシリーズ」として「遺伝と環境の相互作用:氏か素性かの先端科学」というのがシンポジウムのタイトルです。
会場はお台場にある国際交流館という建物の中にある国際交流会議場でした。
お台場は都内でアクセスが良いところとはいえませんが、会場の雰囲気は良いところです。もっと利用されてもよいかも。
一般公開されていて、参加者は120-130名くらいだったでしょうか。
若い方(おそらく、プロジェクト関係者も多いでしょう)とリタイアクラスの方の二相に別れていたような印象でした。
間の相はお子さんが夏休みになって家族イベントでしょうか。
5年前にCRESTのプロジェクトを始めた頃から、「社会の中の科学」を意識するようになり、このようなお招きには極力、参加させていただいています。
今回も市民向けニュースレターBrain & Mindと、東北大学脳科学グローバルCOEのパンフレットを資料としてお配りしました。
私以外の講演者は「脳科学と社会」研究開発領域に参加されている研究者です。
開会のご挨拶は、社会技術開発センター長の有本さん。
例によって「ライフサイエンスにはすでにかなりの投資をした。これからはちゃんと回収してほしい。それが難しいのであれば、何が隘路になっているのかを指摘して改善すべき」と(例によって)檄を飛ばされました。
小泉領域統括からは「架橋的研究の必要性・重要性」を謳ったイントロがあり、その後、以下のような講演がありました。
「進化から見た人間における遺伝と環境の関係」
佐倉 統 (東京大学 教授/計画型研究開発 脳神経倫理研究グループリーダー)
「知能・性格・感情を左右する遺伝子」
石浦 章一 (東京大学 教授/平成14~17年度「脳科学と教育」(タイプⅠ))
「神経新生のメカニズム:遺伝的要因と環境的要因」
大隅 典子 (東北大学 教授/CREST「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」研究代表者)
「人間末梢血による遺伝子発現の準実時間計測」
六反 一仁 (徳島大学 教授/「脳科学と教育」(タイプⅡ)研究代表者)
「双生児研究が明らかにする遺伝子と環境の相互作用」
安藤 寿康 (慶應義塾大学 教授/「脳科学と教育」(タイプⅡ)研究代表者)
「コホート研究による遺伝因子と環境因子の相互作用の解明」
安梅 勅江 (筑波大学 教授/計画型研究開発 研究統括補佐 指標開発グループリーダー)
さらに、パネル討論にはゲストとして元朝日新聞の武部俊一氏も加わって、遺伝やら攻撃性やら性差やらについての議論と、学際的研究を進めるには何が必要かについて、領域アドバイザーの先生方からのご意見がありました。
個人的には安藤先生の双生児研究の分析結果と、安梅先生の子供の発達に関する大規模なコホート研究について興味深く聞きました。
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そういえば、一昨日戻ってきた際には無かったのですが、今日は七夕飾りが駅に飾られていました。
もうすぐ七夕祭りです。