内宮を渡る風さやか

日射しの強い参道を歩きながら、白州正子が近江を歩いてエッセイを書き残したのは彼女が何歳のときだったのか、そんなことを思い出していました。
18歳まで逗子に棲み、中学は鎌倉鶴ヶ丘八幡宮の裏に通っていた者の目には、なだらかな山並みが一番ほっとします。
初めて伊勢に来て、何か懐かしいような気がしたのは、遠い記憶のせいかもしれません。

天照大神がおわします伊勢神宮の内宮は、宇治橋から一の鳥居、二の鳥居をくぐってさらに奥でした。
ときおり爽やかな風が通りすぎ、この土地が神宮に選ばれたのは、「気」が良かったのだろうと想像します。
ご案内頂いた小川先生とそのご友人は「今日は時間もあまりありませんので」と仰って、良い眺めのスポットをいくつかご紹介下さいました。
まるで映画の予告編のようで、いつか絶対に時間を作って来なければと思いました。

2013年に遷宮を控えて、来年は宇治橋の架け替えとのこと。
神様の力が衰えないようにという意味と、伝統建築の技術の伝承と、両方の意味があるのですが、そのために世界遺産に登録されないのは残念でもあり、でも、違う価値基準なのですから、それを誇るべきですね。
橋の廃材も再利用されるそうです。
お茶の世界では、法隆寺の廃材で誂えた炉縁(ろぶち)など、たいそう重く扱うのですが、そういう文化も世界に発信しないといけませんね。

広い内宮の植栽は見事に手入れされていて、日本人の愛でる自然とは、野生そのままではなく、人の手が関わったものであることを強く意識しました。
いろいろな文化が朝鮮や中国から輸入され、それを独自のものに進化させた感性は、厳しすぎない天候のおかげだったのでしょう。

帰りは宇治山田駅から近鉄の特急に乗りました。
こちらがお伊勢参りの表玄関とのこと。
いくつもの河を超えましたが、このあたりの土地が昔から稲作に適していたからこそ、古代の日本の中心となっていたのだと実感しました。

あ、ちなみに、伊勢はマラソンの野口みずき選手のふるさとということで、のぼりがたくさん立っていました。

宇治橋を渡ったあたり。逆光なのです。
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内宮の中。植栽が綺麗。
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参道の様子。あ、赤福本店の方を撮り損ねました!
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*****
実は、本日どうしても東京で寄りたいところがあったのですが、それは上野の東博の展観「対決—巨匠たちの日本美術」でした。
8月17日までだったので、今日を逃すともう見られないということで、途中下車。
昨日から東京都美術館でフェルメールもやっていて、東博は空いているかと思いきや、さにあらず、ものすごーーーーーい人出で、館内の温度も高め(涙&溜息)。
東京ってなんでこんなに人が多いの???
もう、美術を鑑賞するなんていう環境じゃないです。
博物館も生き残りをかけて、とにかく集客しなければならない時代になったことは分かりますし、今回の展観も朝日新聞130周年やら、國華創刊120周年とタイアップして、しかも、「若冲 vs蕭白」などの組み合わせにして、それにキャッチコピーを付けて、「こんな風に観るとよいですよ」と手取り足取り。
いえ、たくさんの方々が鑑賞すること自体は悪くないのだけど、とにかく、美術を観に行ったのか、人を眺めにいったのか、という按配。

……という文句は置いておいて、例によって「この中からもし下さるのだったら」という空想の世界でいうと、そうですね、宗達や光琳の屏風絵も良かったけど、とても家には置けないし(笑)、尾形乾山作、色絵紅葉図透彫反鉢か、色絵菊図向付ですね。
この反鉢(そりばち)は透かしも入った凝ったもので、内側には竜田川の文様もあって、なかなかの出来栄え。
これ、個人蔵なんですよね……。すごいなあ。
向付(むこうづけ)の方はかなり大きめ。
文様が派手なので、むしろ白身のお刺身などが似合いそうでした。

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仙台に戻ると、30℃以下の気温って、なんて人間的!と感動。
by osumi1128 | 2008-08-03 22:02 | 旅の思い出

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