シアノバクテリアでアート【追記あり】
2008年 08月 30日
仙台は夜10時頃が雷のピークだったでしょうか。
自宅の窓から美しい稲妻が見えました。
どこに落ちたのでしょう……?
地震の後にこの大雨ですと、被災地での土砂災害が心配です。
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さて、本日のタイトル「シアノバクテリアでアート」って何?と思われた方、今、説明しますのでお待ち下さい
昨日、インフォーマルなセミナーとして、同僚の五十嵐先生のところが主催で、早稲田大学の岩崎秀雄さんのセミナーがありました。
岩崎さんは以前こちらのブログでも取り上げましたが、サイエンスもアート(切り絵)も一流、という多才な方。
サイエンスの方は「比較的単純な時間パターン形成(概日リズム・体内時計)と空間パターン形成(細胞分化)を選び,ベースとなる生体分子のネットワークやダイナミックスを研究(HPより)」されているのですが、このモデルとして使っているのが「シアノバクテリア」というシンプルな生き物です。
35億年前の化石に残っているものがこのシアノバクテリアではないか、ということから、地球最古の細菌という説もあります。
「シアノ」は「青」という意味で、藍藻とも呼ばれるようですが、単細胞のものから、細胞が一列に並んだものまで、非常に種類が多いのだそうです。
代謝系として、光合成と窒素固定を行うことができ、これが見事に反対の位相で昼夜リズムを刻んでいることが、リズムの研究者にとっては大きな魅力。
さらに、細胞が一列に並んだものでは、いくつかの細胞おきに光合成に特化した細胞が分化するという点が、パターン形成のモデルとして面白いとのこと。
で、セミナーではそんなサイエンスのお話のほか、「研究室の中でのアート活動」についてもご紹介下さいました。
「好きなことをしてください」と、とあるアーティストに毎日実験室に来てもらっているのだそうですが、このシアノバクテリアを緑色の絵の具、として使ってみているそうです。
彼女にとっては、「シアノバクテリア」は「増える絵の具、変わる絵の具」として面白いとのこと。
寒天培地の上にシアノバクテリアで絵を描くと、だんだんそれが変化していく、それを画像に撮って並べてみたりすると、なかなかにアートしているのですね。
他にも、GFPで光らせたシアノバクテリアだったかの増殖や運動の様子をビデオに撮ったりしたものとか。
岩崎さん曰く「生物の実験としては失敗のデータも、アートになりうる!」
いやー、実に面白いセミナーでした。
【追記】
セミナー後の夕食会で、「岩崎さんは、昆虫少年? それとも、ラジコン少年かプラモ少年でしたか?」と伺ったら、「どれでもありませんねー」というお答え。
ちなみに、切り絵は7歳の頃から始められたとか。
左手で紙を押さえながら右手のデザインナイフで切っていく、その触角が楽しく、次々と抽象的なデザインに繋がっていくのだそうです。
「とても<身体的>なんですね」「まさに、そうです」
そういえば、陶芸家が轆轤を引いたり、土を捏ねたりというのも、その感触が楽しいというお話を聞いたことがあります。
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今朝は久しぶりの大隅ゼミで、医学部生ほか7名が集まりました。
山中さんの2006年のiPS細胞の最初の論文を数回にわたって読みこなしました。
午後は文科省で人材委員会があり、今後の科学技術人材育成についての議論をしました。
配付資料の中に、「学校基本調査速報(平成20年度)」のデータがあり、平成3年から平成12年までの9年間の間で、大学院在学者数が2倍超に増えたこと、博士課程修了者は平成19年までは年々増加しましたが、平成20年で初めて減少。
博士課程修了者の就職率は、平成15年が最低で54.4%だったのですが、平成20年では急増し、63.2%にまで回復したとのことです。
これが、全体的な就職状況の改善のせいか、科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業などの効果なのかは、さらに来年度をみないといけないでしょうね。
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帰りがけの東京駅の風景です。
まだ雨は降っていなかったのですが……。
