エンハンスメントとストレートパーマ
2008年 09月 18日
確かご本名が「典子」だったと思うのですが、自分にツッコミを入れる文体が好きです。
で、うさぎさんはあちこち整形したのをネタに、エッセイやらコラムやらを書いているのですが、「整形」って「エンハンスメント」ですかね???
しばらく前に「エンハンスメントの哲学と倫理―脳神経科学と人類の未来のあり方を問う―」というシンポジウムに出席しましたが、エンハンスメントは一般的には「病気の治療を超えて身体や精神の能力を増強すること」とされています。
拡大解釈をすれば、人類が煙草やコーヒーやチョコレートやハーブを発見してしまったことは、すでにエンハンスメントの始まりだった訳ですね。
天然物ではありますが、精神機能に影響を与える化学物質によって、スッキリしたり、興奮したり、リラックスしたりできるのですから、身体や精神の状態を人為的にコントロールしています。
80年代くらいでしょうか、遺伝子治療が拓く未来に対する警鐘が鳴らされたことがありました。
その時代でも、もちろん今でも(昔よりも、その魅力は減ったのですが)、何らかの病気を遺伝子治療するとすれば、それは「体細胞」における遺伝子導入に限局されていて、次世代に伝わる「生殖細胞」に対しては行わないことが決められています。
ですので、「デザイナーベビー」というイメージは、身体的なエンハンスメントであれ、精神的なものであれ、まったくもって非現実的なのですが、そういうことを心配される方もいらっしゃるようです。
もちろん、どこかの超大金持ちが自分の財産を投じて研究者を雇い、そういう研究をすることは不可能ではありませんが、税金を元にした研究費を使う研究者にはありえないと言えます。
先日のシンポジウムにおいて、信原幸弘先生は「エンハンスメントで頭が良くなるということは倫理的でない」という指摘をしておられましたが(それがどのように可能なのかは置いておくとして)、「整形で綺麗になることは倫理的ではない」という感覚に近いのでしょうか。
何か「ズルイ」というような感情を持つ、ということでしょうか。
それは、「整形」は生きていくのに不都合ではないことに対して行われるために、保険の適用外なので、自費診療としては費用がかかって、万人に対して為されうるものではない点において「ズルイ」のでしょうか。
いわゆる「ダイエット」などの努力によって綺麗になるのはOKでも、努力無しにお金で即刻解決するのは腑に落ちないということでしょうか。
こんなことを思い出したのは、連休の間に美容院に行ってストレートパーマをかけ直したからでした。
私が親から受け継いだ遺伝子セットからは「癖毛」が生じるのですが、それを矯正することは「エンハンスメント」でしょうか?
費用は、整形に比べるなら非常に高いとはいえませんが、髪の毛は伸びますので、数ヶ月たったらまたかける必要があります。
「癖毛」のままでも生きていく上でなんら支障はありませんし、「ストレート>癖毛」という価値基準があるとも思いませんが、今の気分がストレートなのと、案外、お手入れがラク、ということもあって(笑)、この1年以上、このスタイルです。
そういえば、15年くらい「カラー」もしていますが、これも「エンハンスメント」でしょうか?
じゃあ、育毛はどうか、鬘はどうか???ということになりますね。
パラリンピックの選手も、だんだん記録が向上していくと、健常者と同じルールのもとに、それよりも良い成績を出したくなるかもしれませんね。
そして、それは十分可能なのかもしれません。
おそらく、エンハンスメントかどうかの線引きは、社会によって異なるのだと思います。
ですので、もし何らかの規制等が必要なことであれば、皆でよく話し合って決めることが必要でしょう。
そういえばマイケル・ジャクソンの整形は結局のところ「エンハンスメント」だったのでしょうか……???
*****
来月、東北大学脳科学グローバルCOEと上海の復旦大学神経科学研究所のジョイントシンポジウムを復旦大学で開催予定です。
その打合せで復旦大学のLi先生が来仙されていまして、本日はセミナーを聴きました。
復旦大学は魯迅ゆかりの大学で、魯迅は東北大学医学部(の全身である仙台医学専門学校)に学んだ方です。
学生さんやポスドクの方達の勝負が楽しみです。
こちらは、東北大学片平本部前の魯迅像です。

*****
ところで、月末のイベント@東京のお知らせです。
七大学男女共同参画・女性研究者支援部門合同シンポジウム「男女共同参画社会の実現に向けて」が9月26日(金)の午後に学士会館で開催されます。
七大学の総長揃い踏みにより、各大学の女性研究者育成支援への取組が披露される予定です。