第44回楽しむ科学教室in佐賀

取っていただいたホテルは、木々が目に和むお堀のほとりでした。
毎日持ち歩いていたデジカメのバッテリーがちょうど切れてしまって、せっかく初めて佐賀市に来ましたのに、何も撮らずに戻ることになるのは残念。
やっぱり充電器も大して重くはないものなので、MacBookのコネクタ、マイ・ポインタ、海外用プラグ等と一緒に連れて歩くべきかもしれません。

さて、今回は平成基礎科学財団が主催されている「楽しむ科学教室」のシリーズでの講演を依頼されたのですが、小柴先生が2002年にノーベル物理学賞を受賞され、その賞金を注ぎ込んで作られた財団は、次のような事業を展開しています。

1.講演会の開催  
   1)高校生対象「楽しむ科学教室」の開催  
   2)外国人科学者等による講演会の開催
2.「小柴昌俊科学教育賞」
 卓越した科学教育を推進し、顕著な実績をあげている教育者に対する顕彰
3.基礎科学に関するDVD作成
4.「楽しむ科学コンクール」
  基礎科学への興味と関心を高めることを目的に、 科学研究や科学教育に関する独創的、 画期的なアイデアや企画に対し、そのアイデアや企画が実践に結びつくための支援、助成を行ない、さらにその活動を通して得られるユニークな成果に対して表彰を行なう。

とくに「楽しむ脳科学」は、半分は東京、半分はそれ以外の地域での開催ということで、例えば賛助会員になっている佐賀県などでも開催されているという次第です。
国民一人一人が1円ずつ寄附すれば、1億2千万人集めたら相当の金額になる、そうやって科学を支える・振興するのも良いのでは、というのがキャッチフレーズとのことで、人口約86万人の佐賀県さんは86万円を寄附しているのです。

お昼を小柴先生はじめ財団の方と佐賀県知事の古川様ほかで頂きましたが、地産地消の食材なのが嬉しいおもてなしでした。
「口底(くちぞこ)」というシタビラメの一種は初めてのお魚でした。
ヒラメやカレイは外見も「対称性が破れ」ていますね。

会場はiスクエアビルという、県とNTTの共同出資の建物の会議室で、参加者が80名くらいだったでしょうか。
高校生、大学生が中心ですが、一般の方や大学関係の方も参加されていました。

財団理事長の小柴先生のお話によれば、「楽しむ科学教室」は「楽しい科学教室」ではなく、自ら能動的に「楽しむ」姿勢を大事にしている、とのことで、なるほどと思いました。
その次、知事の古川様は、東大法科、総務省(旧自治省)、その後、政治家に、というパターンから伺われるエネルギッシュなスピーチでした。

私自身の講演は80分X2+質疑応答だったのですが、今回のノーベル化学賞の受賞対象のGFPを用いた画像のところで、その説明を入れたりし、ムービーなども多めに用意して臨みました。
皆さんが楽しんで下さったら本望です。
財団や県の関係者の方々、お世話になり有難うございました。

*****
ノーベル賞にはいろいろなドラマがあり、本当に事情を分かっている方々が思うことも、周りの下馬評も、本人にしか分からないだろうことも種々あるとは思いますが、サイエンスの世界に身を置く人間にとっては、北京オリンピックよりは遙かに高い関心があります。
だからといってTVニュースはあまり見ないので、益川先生がなぜ「うれしくない」と言ったのか、などには興味がありません。
人は複雑な生き物であり、言葉にしたことがすべて真実であるとも限りませんし、どんな気持ちだったのかは、本人にもわからないことも多々ありますので。

司会をして下さった武田先生は、小柴先生より2つお年上で80代半ばとのことでしたが、東北大学の理学研究科長もされて御退官された後に、脳科学を勉強し始めたとのことで、さまざまな文献を精読されupdateされているのは素晴らしい。
東北学院大学で講義をされたり、財団のお仕事をされつつ、「今、脳科学についての本を書いているのです」と仰っておられましたが、学者冥利に尽きる生き方ですね。
by osumi1128 | 2008-10-11 21:52 | サイエンス

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