キリンの首はなぜ長い?

本日は日帰りで旭硝子財団の研究報告会に出てきました。
財団系の研究費で、全員、3分間の紹介スピーチ(PPT使用)とポスタープレゼンをするというのは、かなり稀なことですが、「是非、この機会に研究費受領者同士の交流も深めてもらい、今後の研究に活かして欲しい」という財団の意向は重要と思いました。
100名以上の中で、もちろんマジョリティーは化学系なのですが、私のようなライフ系や都市工学、さらには人文系もマイノリティーとして研究費を頂いています。
旭硝子さんは「ブループラネット賞」を授与している財団で、環境問題に高い見識をお持ちであることがよくわかります。

今回、化学系の発表を聴いていますと、この分野が日本において層が厚く、先端的であろうことを強く感じます。
授賞されている方のプレゼンは、「スライド5枚以内に」と言われていましたが、コンピュータ・グラフィクスも満載です。
もし私が高校生でプレゼンを見たら、生物よりも化学の方が面白そうに思うかもしれない……という気になりました。
かつては、白黒の世界、亀の子の世界にしか見えなかったのですが。

……という訳で、朝から一日(内職もしつつ)化学に曝されていましたが、それなりに得るところが大いにありました。

*****
さて、お約束の「キリンの首はなぜ長い?」というお題です。

折しも本年はダーウィン生誕200年、種の起源から150年という節目で、しかも国際生物学オリンピック2009が今週、つくば市で開催されています。
あ、この広告が月曜日の日経朝刊の全面広告として載っていましたが、かなりカッコいいデザインでしたね。
どこが請け負ったのでしょう……?
(webに載っていないのがとっても残念……。日経広告賞取れるくらいの完成度なのに)

で、ダーウィンと言えば「進化論」なのですが、当時、つまり、大航海時代となって、地球上には(聖書に書かれているよりも)はるかに多様な生物が存在することを知った科学者は、「なぜ、こんなにもいろいろな種類の生き物がいるのだろう?」という問いを立てました。
ダーウィンはその説明として、「自然選択」や「適応」という概念を持ち込んだのですが、他の説明として引き合いに出されるのが「獲得形質の遺伝」です。
「高いところの木の葉っぱを食べて、キリンの首は世代を超えてどんどん長くなっていった」というような例がよく使われます(「そんなことはない」というネガティブな意味で)。
この説を提唱したラマルクは、ダーウィンよりも若干、古い方で、しかも「生物の自然発生説」を信じていたので、本当は、「地球上でもっとも古く生まれた生物が、獲得形質を遺伝してどんどん進化して霊長類となった。もっとも新しく生まれた生物が、下等な菌類である」ということを考えていたのですが、日曜日、北岡さんとお話ししたのは、「キリンの首」についてのちょっと違った見方です。

それは、一言で言えば、「キリンだったら、首は長いのがカッコいいっしょ!」とキリンは感じていたから、どんどんそうなっていったのではないか、という「キリンの美学」です。
異性から見たときにカッコイイという意味での「性選択」だったかもしれませんし、同性同士でも「アイツはいい首をしたキリンだぜ」「あの子は可愛い首のキリンだわ」だったかもしれません。
現代日本のヒトであれば、「やっぱ小顔でしょ」「脚は長くなきゃ」「睫毛はバサバサくらいでないと(←人工的に対応可)」というような形質が、生きていくのに役にたつかどうかとは異なる価値観、「美しいかどうか」を基準に選択されています。
「キリンだって、ちょっと首長めのヤツがカッコよく見えて、どんどんその方向にシフトしていった可能性って、あると思いません?」というところで、北岡先生と大いに意見が一致した次第。
もしかしたら、そのためにこそ、キリンはより高いところの葉っぱを食べて、首を伸ばそうとした(現在もそうしている)かも!?!
ちょうど、若い女の子がダイエットするように。

私の好きな動物にアズマヤドリがありますが、ダーウィンの著書の中にも出てきます
オスがメスの気を引くために、いろいろと飾り立てた巣(本当の巣ではないので、東屋と呼ばれる)を作る、というユニークな習性があり、アオアズマヤドリは青色に美を感じるらしく、巣を青いモノで飾り立てます。
他の種類ではキラキラ系が好きだったり……(←関西のオバチャン系? オスだからプレスリーかマイケルジャクソンか?)。
アズマヤドリや他の種類のトリで、求愛のダンスを踊るものもいて、これも、それぞれの種に独特の美しさの判断基準があるように思います。

すでにこのブログに書いたかもしれませんが、私は密かに、アズマヤドリなどの巣を飾り立てるためにいろいろなモノを集めてくる習性は、コレクター系男性の起源だと思っています(笑)。
最初はメスの気を引くための美学が、オスの中での美学に変わっていったりもするのでしょう。
ヒトの雌のお化粧なんてものも、多分にそういう傾向を有しますね……。

という訳で、「キリンの美学説」については、少なくとも一人、支持者をゲットできました(笑)。
北岡先生は、日曜日のご講演の翌日、仙台近郊の秋保にある万華鏡美術館に行かれて、いたく刺激を受けられたようで、さっそく「錯視万華鏡」なる作品を創られていました。
詳しくはこちら
うーん、私的には、かなり目が回りそう……。
(という話を、本日お目にかかったサイエンティスト兼アーティストの岩崎秀雄さんとしたのでした……。
その他の話題については、また別の折に)
あ、ちなみに、日曜日に着ていたのはISSEYのプリーツものでしたが、模様が錯視デザインっぽい雰囲気だったので、ちょうど良いかなと思って。
by osumi1128 | 2009-07-16 00:05 | 雑感

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